第11話 VSフローズヴィトニル
周りの氷球は軽めの魔力障壁で防ぎ、軽めの魔法操作をしてフローズヴィトニルの真上にほぼ予備動作なしで反転しながら跳びつつ、身体強化のかかった拳で思いっきり鼻っ面を殴った。そうすると案の定フローズヴィトニルは少しひるんで、体を引いてしまった。この手の魔物というより地球の動物たちに近いやつらはこの世界の独自の原理を除けば地球のまんまだと考えていい。鼻を引いたところに魔法操作で空中でほぼ直角に曲がり、フローズヴィトニルの横を取り、もう一発さっきよりも、もう一段階魔法で強化した拳を叩き込んで吹き飛ばした。
「ぬぅ・・・」
「どうした?Sランクの魔物はこの程度か?」
あえて挑発してみる、流石にフローズヴィトニルクラスの魔物ならもう少し骨があるはずだ。
「小僧が図に乗るな」
フローズヴィトニルがそう言いながら雷の矢を十数発撃ち込んできたので、それを避けようとしたところに本体が突っ込んできた。
「くっ」
咄嗟に騎士団から支給された剣で受け止めたが空中で受け止めたために吹き飛ばされてしまったが、簡単な魔法操作で衝撃は殺し、両足でふわりと着地した。
「流石に空中で不意を突かれると対応しにくいな」
「妾としては今ので終わらせたつもりなのだがな」
「そう簡単に負けるわけにはいかないからな」
「威勢はいいがその剣はもう使えんぞ、素手で妾に勝てるわけがないだろうに」
よく見ると剣がさきほどの攻撃で半ばから折られていた。
「得物がそれでは勝てまい、少しは楽しめたぞ小僧」
そう言うとフローズヴィトニルが凝縮させた魔力を俺に撃ってきた。
『フリージングブレス』
この場にいる誰もが目をつぶった。
目の前に迫る上級魔法を眺めながら、右手を前にかざす。
『狭域結界』
目の前で結界にぶつかったブレスが霧散していく。
「なっ!」
「う~ん、物足りないな、火力不足」
体を宙に浮かせながら魔法陣を周囲に展開していく。
「しっかりお返ししないとな」
『常夜の呪縛』
視界と行動を奪い
『星降る夜』
一瞬で辺りが暗くなり沢山の星(俺の魔法弾)が目の前のフローズヴィトニルに降り注ぐ。
「ちょっとやりすぎちゃったな・・・」
久しぶりにオリジナルの魔法を使ったせいで目の前のフローズヴィトニルに向けて撃ったはずの魔法が半径30mぐらいに落としてしまった。カリュアス団長と白銀は無事だろうか?
「いや~危なかった危なかった。結界を張るのが少しでも遅れたらこの世に残れんかった」
豪快に笑いながらカリュアス団長が白銀を連れて砂煙の中からでてきた。
「力加減を間違えてしまいました、本当にすみません」
魔物ならいざ知らず人なら確実に殺してしまう火力を出してしまったので危なかった。今度出力調整もしておかなければいけない。
「なんかよく分からないですけど取り敢えず解決でいいんですよね、神代君?」
「そのはずだ、後はあのフローズヴィトニルから話を聞きだせばいいかな」
そう言いフローズヴィトニルがいたはずの場所に向かおうとした。
「主、騎士団の他の人が急速にここに近づいておるぞ」
さっき魔法を撃った音を聞きつけて寄ってきているのか。
なら、先ずすべきことは
「ルー、そいつを異空間に取り敢えず隠すから手伝ってくれ、その後は元のサイズに戻ること、そしてカリュアス団長と白銀さんはここで俺のしたことを黙っていてほしい、フローズヴィトニルはカリュアス団長が倒したことにしてください」
矢継ぎ早に指示を出す。
「黙っておく代わりに今度、俺にだけはしっかり説明してもらうぞ」
「構いませんよ」
「ありがとうございます」
ルーにフローズヴィトニルの位置を特定してもらい気絶したままの彼女を異空間BOXの従魔たちを運ぶときに使う部屋に移し終わるとほどなくして近衛騎士団とクラスメートたちが到着した。
「団長、これは一体?」
「ダイアウルフの群れに囲まれてな・・・彼らを守るために力加減を間違えて周囲ごと吹っ飛ばしてしまった」
そう言いガハハハッと笑うカリュア団長と話を聞いて呆れた状態の近衛騎士の人達。
「取り敢えず、これで依頼は解決したのだし教国側に報告しようではないか」
「分かりましたけど、この辺りをはげ山にしたことも説明しといてくださいね!絶対ですから」
普段から振り回されているのだろうか、胃のあたりを抑えながら説教する近衛騎士さん、お疲れ様です。それにしてもカリュアス団長、演技が随分と達者なようだ。
その後、教国側の関係者に事の顛末を報告すると感謝され教国の教都の宮殿に招待されることとなった。
「そうか、あの遺跡の周りの魔物どもを駆逐できたか・・・」
豪華な私室でワインを飲みながら己が子と話す老人がニヤリと笑う。
「父上、今回は僕のわがままを聞いてくださってありがとうございます。」
「何を言い出すかと思ったら過去の聖女を自分の妻にしたいだとはな、聞いたときは流石の儂も固まってしまったわい」
「彼女が封印されていることを知るのは今では我らの一族だけ、そこでこの件だけが広まれば我が一族の求心力はさらに上がるし、お主の代も安泰じゃな」
「えぇ、そうですね、後は封印を解くだけその際は僕自身が赴きます」
「分かった」
「「我が一族の恒久の繁栄と安寧を願って」」
そう言いワインを飲み干すと青年は部屋を出た。
「もう少しで、伝承上の聖女が俺の物になる・・・楽しみだなぁ、待っていろエリシア」
怜はまだこのことを知らない。
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