ちょっとだけ明かされる秘密

「明ー!」


 地下室から戻ってくると、じいちゃんの呼び声が聞こえた。

 どうやら制限時間のようだ。


「呼ばれてるから、俺行くね。今日は本当にありがとう!」


 王がいなかったら、こんなにタケノコ採れなかった。

 後で炊き込みご飯でも持って行ってあげよう。


「サヨナラ」


 王は颯爽と去っていった。

 俺は重い籠を担ぎ、結局籠に入りきらなかった巨大タケノコは手に持つ。


「じいちゃんー!」


「おおっ! すごいな明!」


 一時間ぶりに出会うと、じいちゃんの籠もタケノコでいっぱいだった。

 ちょうど同じくらい採ったのかな。

 でも、今抱えている巨大タケノコの分こっちが多いような。


「あそこに埋まっとるタケノコを抜くとはなぁ……」


 感心するように頷くじいちゃん。


「え、じいちゃん知ってたの?」


 と驚くが、山に詳しいじいちゃんなら知ってて当然だよな。


「ああ。じゃが、ワシにはとても抜けんかったからのう」


 俺でも抜けなかったもん。

 協力がなければとても無理だった。

 ……あれを協力と言うかは謎だが。


「それじゃあ、この勝負は明の勝ちじゃな」


「本当!? やったー!」


 最初は諦めかけていたが、クリアできてよかった!

 そして、試練をクリアしたってことは。


「七つ星家の怪異について教えてくれる?」


「まあ、そう焦るな。まずは帰ってタケノコでも食べよう」


―――――――――


「これ本当に明が採ったの?」


 母さんは巨大タケノコを見て、目を丸くしている。


「うん、そうだよ」


「信じられないわ」


 すると、父さんも会話に入ってきた。


「そうだよな、母さん。あの貧弱な明が……」


「もう! 二人して俺をなんだと思ってんだよ!」


 たしかに驚くべきことだけど、認めてくれよ!

 俺はちょっと怒りそうになる。


「「ははははは!」」


 一方両親は不機嫌な俺を見て、大笑いしている。

 そこへ仲裁するように、じいちゃんが来た。


「そんなに笑ってやるな、二人共。明は今日頑張ったんだぞ」


 それを聞いて、母さんと父さんは顔を見合わせる。


「そうね」


「よく頑張ったな」


「……」


 かと言って、褒められると照れてしまう。

 自分で思う、めんどくさい年頃だって。


―――――――――


「明、こっちに来なさい」


 食後、じいちゃんが俺を縁側に呼んだ。

 行きはあんなに暑かったのに、もう夕暮れで涼しく感じる。


「明は七つ星家の怪異についてどれくらい知ってる?」


 どれくらいって……。


「七つあるのは知ってるよ」


「そうじゃ、七つじゃ」


「それで、今最後の七つ目を調べてる」


 とはいえ、前の六つの怪異もまだわからないことだらけだけど。


「ほう、もう七つ目か」


 口調は驚いたようだけど、表情からしてまるでわかっていたみたいだ。


「明はすごいのぅ、勇気がある」


 勇気……か。

 そんな風に褒められたのは、初めてかもしれない。


「七つ星家の人間って、みんなそうなの?」


 あれだけの怪異と向き合えるから。


「ふ~む、そうかものう。怪異にびくびくしていたらなにもできないじゃろ?」


 それはそうだ。

 これは七つ星の血なのかも。


「どうしてこの家には怪異が伝わっているの?」


 これもわからない。


「ふむ。それはな……」


「それは?」


 気になる答えは?


「まだ教えることができん」


「ええ!?」


 まだってどういうこと?

 いつか教える日が来るのか?


「それ以外のことなら、答えられるかもしれぬな」


「じゃ、じゃあ……」


 なにから尋ねたらいいかな。


「今調べてる七つ目の怪異の正体って……?」


「それを教えたら、おしまいじゃ」


 そう素直に教えてはくれないよね。


「これまで通り、自分自身の力で頑張るんじゃぞ」


「わかった……」


 でもこのままじゃ、なにもわからない。

 質問した意味はあったのかな。


「まだなにも教えることができなくて、すまんのぅ。じゃが、これは古くから伝わる掟なんじゃよ」


 申し訳なさそうなじいちゃん。

 その口から気になる言葉が。


「掟?」


「七つの怪異の真相を知ったときに、包み隠さず話してやる。もう少し、がんばるんじゃぞ」


「……」


 やっぱりまだ秘密がありそうだ。

 この家や怪異には。

 早く七つ目の怪異について調べなきゃ。


「明に一つヒントをやろう」


 別れ際、じいちゃんが言う。


「なに?」


「明日、母さんに訊いてみなさい。次の試練が待っているぞ」


「母さんに……」

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