事後調査で得られたもの

 次の日。

 俺はなんとなく図書館に行ってみる。

 もう一度、あの怪異について調べてみようと思ったからだ。

 実物を見た後だとなにか違うものが見えてくるかもしれない。


「あれ……」


 ふと入口に置いてある新刊が目に入る。

 夏のホラー特集として怖い本が置いてあるのだが、その中に『開封村の怖い話』という本があった。

 気になったので手に取る。

 なにか面白いものが載っているかも。


 とはいえ、俺の怪異調査も始まったばかり。

 まだまだ聞いたことがない話もかなりある。

 お、これは知ってるぞ。

 「ペルセウス座流星群と謎の光」か。

 絶対あいつのことだな。


「あっ、これは」


 「山の中から誰かを呼ぶ声」。

 あいつのことだな。

 なになに?


「ここ開封村にある山に立ち入った時、けっして道を外れてはいけない。村のおばあさんが我々に教えてくれたことだ」


 あのおばあさん、誰にでもこの話してるのかな。

 至極おばあさんは話好きだからな。


「取材班も登山道を歩いているとき、どこからか聞こえる声を捉えた」


 おっ、この人達も会ったのか。

 遭遇率って結構高いのかな。


「しかし、マイクには録音できず、カメラにもなにも映らなかった」


 それは残念だな。

 まあ、あいつ妖怪みたいな存在だしな。

 直接会ったわけではないみたいだから、姿を見てないのは当然か。


「その後独自の調査により、千年程前の文書の記述から正体に迫る記述を見つけた」


 おおっ、すごい!

 なにがあったんだろ?


「以前この村では、天変地異を鎮めるために山に生贄を捧げていたようだ」


 人柱か……。

 そんな時代があったんだな。


「その生贄に選ばれるのは、村で居場所がない者だったらしい。中には身寄りのない子供もいたようだ」


 要らない奴を生贄に出す……か。

 合理的だけど、悲しい風習だな。

 自分のなにもかもを否定されるようだ。


「そうした生贄に捧げられた孤独な人々の魂が山に訪れる人を呼んでいるのかもしれない」


 なるほどな。

 あいつも子供達も、俺と遊びたがってたもんな。

 それは俺をあの空間に閉じ込めたいからじゃなくて、本当にただ寂しかっただけなのかも。

 そう考えるともっと遊んでやればよかったな、なんて思ってしまう。


「よし……!」


 立ち読みはここまで。

 後は家に帰ってゆっくり読もう。


―――――――――


 家でじっくり読もうと思ってたけどさ。

 よく考えると、今読んだら怪異録のネタバレになりそうでなんか嫌だな。

 だから、七個目の怪異の調査が終わってから読もう。

 一応この本は参考文献だから、いつかは読みたい。


「うーん、でもなんか……」


 これ、気になるんだよね~。

 目次を見てると、ある話が目について離れない。

 それは「開封村の由来」という話。

 誘惑に負けて読み始める。


「ここ開封村は古には『怪封』という名前だった」


 怪封……。

 「かい」の字が今と違うな。


「由来は村周辺に物の怪が住まい、人々を地獄に誘うと言われていたからだ」


 物の怪が?

 平安時代の京都にも鬼が住んでいたとか言うぐらいだから、ここでもそんな噂があったのかな。

 となると、ここに現れる怪異はかなり前からいたのかな。


「そのこの世ならざる者共を封印する七星家があたりを納めていたことから、怪封の名で呼ばれているらしい」


 七つ星!?

 まさかここで俺の先祖が関係してくるのか!

 怪異を封印していたなんて信じられない。


「余談だがこの七つ星家は現在でも続いている」


 そうだね、俺がいるもんな。


「噂ではこの家には『七つ星怪異録』なる本があるようで、取材をお願いしたのだが断られてしまった」


 取材NGか。

 この人達も中身が何かは知らないんだな。


「あれ、ってことは……」


 俺の自由研究って『七つ星怪異録』の内容を初めて暴露する研究なのでは?

 これって結構すごいことでは?


 ……なんだかワクワクしてきた。

 ちょっとだけ自由研究に対するやる気が出てきた俺であった。

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