第63話 お母さん、ハンバーガー屋さんになるの?
母は、よく分からない人だ。そして、よく分からない仕事をしている。代表者であるにも関わらず、お給料どころか赤字で経営をしているのだ。
母は、よく分からないことを言う。イマドキ高校生にもなってスマホを持っていないのは、私ぐらいであろう。理由は、「働いたお金で、通信料を払いなさい」というワケだ。立派そうに聞こえるかも知れないが、わたしの高校はバイト禁止なので、家で「アルバイト」という名のお手伝いを有料でしている。
単価は、どれも“10円”だ。
わたしがどれだけ頑張ったところで、1ヶ月のお給料は2500円前後なものだ。これでは、通信料どころではない。
ある時、母が仕事の電話をしているのを聞いてしまった。
内容は、こうだ。
「お世話になります。やっぱり、ハンバーガーはあまり好きではないですね。私ぐらいの年齢以上の人は、少し面倒なんです。若い方は、本当にハンバーガーのほうがいいんですか? ハンバーガーの他にも、並べたほうが便利なんですけど。ばっと見て、分かるってほうが。はい、また後日で大丈夫です」
わたしは、耳を疑った。わたしの母は、今の事業を補てんするために他の事業にも手を出すつもりなのかと。それも、ハンバーガー屋さん?? 心の中で、心配と不安が入り交じる。競争相手が、多すぎでしょ!
止められるのは、お父さんではなくわたしではないのか? 誰にも相談できないので、とりあえず日記で先生にも意見を聞いてみることにした。
「私の知り合いが事業に失敗したので、新たな事業を(ハンバーガー屋さん)しようとしています。先生なら、賛成しますか? 反対しますか? 」
『ぼくなら、反対します。きっと、その知り合いの方に、ハンバーガー屋さんは難しいとお伝えしてはどうでしょう』
よく考えると、これはヤバいことを書いてしまったのでは?
案の定、次の日、血相を変えたお父さんが台所で母を問い詰めている。
「おい、母さんは、ハンバーガー屋さんのお店を、作ろうとしてんの? 俺には、何の相談もないんじゃねぇの? いくらなんでも、少しくらい……」
「は? いったい、何のこと? 」
「ん? 何のことって、なぁ、おい! お前が、説明しろ」
と、2人がお父さんの指差したを見た。いきなりやり玉にあげられたわたしは、渋々話をした。
「あぁ、電話で話してたハンバーガーね。あれ、携帯用のホームページのメニューを押すボタンの名前でハンバーガーボタンて呼ぶんだって。○の中に3本線が横に並んでてハンバーガーみたいだから、専門家がそう呼ぶのよ。面白いよね? で、なんでお父さんまで知ってるの? 」
人を、ヒヤヒヤさせといて面白くないわ!
横を見ると、わたしの日記を盗み読みしてたのがバレたかとヒヤヒヤしてるお父さんがいた。
わたしの日記が、お父さんに読まれてます @michiseason
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