第2話 はぐるまうさぎの朝

 はぐるまうさぎには定位置がある。戸田家のあやちゃんのベットの枕元。

 はぐるまうさぎには大好きな呼び名がある。毎朝ママさんが呼んでくれる。

「おはよう。あやちゃん、はぐ。」

 はぐるまうさぎを“はぐ”と呼ぶのは、戸田家の人だけ。大抵の人は、フルネームか“うさぎさん”と呼ぶものだ。

「いい天気よ。」

 ママさんはカーテンを開け、今日も、はぐるまうさぎの頭を一撫でした。

 今朝は随分と清々しい秋晴れだ。自然光で部屋が一気に明るくなる。この部屋はあやちゃんの物で溢れている。赤ん坊の頃の玩具からランドセルや制服、本、PCパーツまで、例示すれば枚挙に暇がないほどだ。そして、はぐるまうさぎもまた、数多ある物品の一つとして座っていた。

 昼光降り注ぐ中、雑然と置かれ電話線もない、木製でカラフルな電話から、ジリリと着信音が響いた。はぐるまうさぎは、弾けるように近づき受話器を取った。

「こちら、はぐるまうさぎ。あなたの困っていることを教えてください。」

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はぐるまうさぎ~あなたのPC直します~ 鎌上礼羽 @sea-squart

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