哲学魔王の【辞書】

１５．面倒 ～より

１５．前節／中節／後節

　　　　◆◆◆ 前節 ◆◆◆

━─━─ № 15-1 (2,078) ─━─━

　　〖へりくつ〗（名詞）

【屁（へ）理（り）屈（くつ）】⚠　 #2,225

　〈役に立たない理（り）窟（くつ）〉の意。

　転じて〈道理に合わない理（り）窟（くつ）〉〈理（すじ）の通（かよ）っていない理（り）窟（くつ）〉の意。

　〝屁（へ）理屈も立派な理（り）窟（くつ）〟とは謂（い）われて已（や）まないが、ここでの［屁（へ）］とは〈役に立たないもの〉〈取るに足らないもの〉〈地味に迷惑なもの〉の意、つまり〝何ひとつ「立派」でない役立たずな理屈〟という事であるから、そう言われたなら開き直るよりも少しは怒って、かつ少しは反省したほうがいい。

━─━─ № 15-3 (2,080) ─━─━

　　〖ていじる〗⛏（ザ上一段動詞）

【提（てい）じる】⚠⛏　 #2,226

　〈提言する〉〈提示する〉の意。

━─━─ № 15-5 (2,082) ─━─━

　　〖せちがらい〗（形容詞）

【世（せ）致（ち）苛（がら）い】⚠⛏　 #2,227

　〈世の人々の做（な）す為（し）打（う）ちがつらい〉の意。

　転じて〈世渡りしにくい〉〈暮らしにくい〉の意。

【世（せ）知（ち）辛（がら）い】✗　 #2,228

　語義不相応のため遣うことを推（すい）奨（しょう）しない。

　この表記では〈世渡りの知恵がつらい（⁉）〉のような意となる。

　［世（せ）知（ち）］は〈世俗に生きる凡（ぼん）夫（ぷ）の知恵〉転じて〈世渡りの知恵〉の意。

　仏教由来であること以前に、「知（ち）恵（え）辛（がら）い」と言い換えてみればすんなり通りづらいと感じられるもの。

━─━─ № 15-7 (2,084) ─━─━

　　〖しがらみ〗（名詞）

【仕（し）絡（がら）み】⚠　 #2,229

　〈強く絡みつかされた邪魔なもの〉の意。

　転じて〈縁故に起因する面倒事〉の意。

【柵（しがらみ）】【柵（しがら）み】⚠　 #2,230

　〈強固に埒（かこ）われて抜け出しがたい柵（さく）〉の意。

　転じて〈利点よりも欠点のほうが多い枠（わく）組（ぐ）み〉の意。

【簗（しがらみ）】【簗（しがら）み】⚠　 #2,231

　〈魚（さかな）獲（と）りのため川に設置する籠（かご）や堰（せ）き止め柵（さく）〉の意。

━─━─ № 15-9 (2,086) ─━─━

　　〖やくわりちゅうどくしょうこうぐん〗⛏（名詞）

【役（やく）割（わり）中（ちゅう）毒（どく）症（しょう）候（こう）群（ぐん）】⚠⛏　 #2,232

　〈役柄に託（かこつ）けて本意と異なる行動を人に采（と）ったり采（と）らせたり令（さ）せる強迫観念〉の意。

　人の幸福追求を阻害する要因としてはトップクラスのものと推定される。

　英語で〝Rollholic（ロールホリック） Syndrome（シンドローム）〟と言えばなんかカコイイ気がする（

━─━─ № 15-11 (2,088) ─━─━

　　〖つける〗⛏（カ下一段動詞）

【託（つ）ける】⚠⛏　 #2,233

　〈託（かこつ）ける〉の意。

　転じて〈機会に乗じる〉〈断定的に評する〉の意。

　〝託（つ）け込（こ）む〟〝託（つ）け上（あ）がる〟など。

━─━─ № 15-13 (2,090) ─━─━

　　〖らくごしゃ〗（名詞）

【落（らく）伍（ご）者（しゃ）】⚠　 #2,234

　〈隊（たい）伍（ご）の進行から取り残された者〉の意。

　転じて〈落（おち）魄（ぶ）れた者〉〈仲間はずれとなった者〉の意。

　なお［伍（ご）］は〈肩を並べる〉〈同じ位置に並ぶ〉、「隊（たい）伍（ご）」は〈列をなす部隊〉、「落（おち）魄（ぶ）、落（らく）魄（はく）」は〈魄（たましい）が穢（けが）れること〉の意。

━─━─ № 15-15 (2,092) ─━─━

　　〖ごみ〗（名詞）

【埖（ごみ）】⚠　 #2,235

　〈役に立たないもの〉〈廃（はい）品（ひん）〉〈捨てられたもの〉〈廃（はい）棄（き）物〉〈汚らしいもの〉〈汚物〉〈芥（あくた）〉〈埃（ほこり）〉〈塵（ちり）〉〈屑（くず）〉〈滓（かす）〉〈殻（かす）〉の意。

　組成は〔木（ご）味（み）〕であり、「木（ご）」は「木（こ）」の濁音減価で〈落ち葉〉の意、「味（み）」は〈部類〉転じて〈それっぽさ〉の意。

　〔埖〕は国字であり、〝咲き終わって土に落ちた花は汚（きたな）らしくてもう役に立たない〟ことから会意されたものと想像される。

【芥（ごみ）】⚠　 #2,236

　〈細かな埖（ごみ）〉の意。

　転じて〈取るに足らないもの〉の意。

【埃（ごみ）】⚠　 #2,237

　〈物を叩（はた）いたときに出る芥（ごみ）〉の意。

　転じて〈鬱（うっ）陶（とう）しいもの〉の意。

【塵（ごみ）】⚠　 #2,238

　〈土（つち）埃（ぼこり）〉の意。

【屑（ごみ）】⚠　 #2,239

　〈削り屑（くづ）〉の意。

　転じて〈不要なもの〉の意。

【滓（ごみ）】⚠　 #2,240

　〈不要な搾り滓（かす）〉の意。

【殻（ごみ）】⚠⛏　 #2,241

　〈剥（む）き取った不要な外（がい）殻（かく）〉の意。

【護（ご）美（み）】⚠✗　 #2,242

　語義不相応のため遣うことを推（すい）奨（しょう）しない。

　この表記では〈美観を保つこと〉のような意となり、［埖（ごみ）］そのものを直接指さない。

　ただ当て字ではあるものの、まあまあ見事に〝景観を保ってほしい〟との願いが込められていると感じられるため、惜しいとは思われる。

　なお［美（み）］は使用頻（ひん）度（ど）のわりに常用の読みではないので注意。

━─━─ № 15-17 (2,094) ─━─━

　　〖へる〗（ラ五段動詞）

【減（へ）る】　 #2,243

　〈減少する〉の意。

【耗（へ）る】⚠　 #2,244

　〈消（しょう）耗（もう）する〉〈摩（ま）耗（もう）する〉の意。

　転じて〈疲（ひ）弊（へい）する〉の意。

【経（へ）る】　 #2,245

　〈とある点を通過する〉〈とある点を経由する〉の意。

　転じて〈きまった道をたどる〉の意。

【歴（へ）る】⚠　 #2,246

　〈時がたつ〉の意。

　転じて〈経歴を持つ〉の意。

☞ 語源は〔古（ふ）る〕。

━─━─ № 15-19 (2,096) ─━─━

　　〖りんらく〗（サ変名詞）

【淪（りん）落（らく）】⚠　 #2,247

　〈落（おち）魄（ぶ）れること〉〈堕（だ）落（らく）すること〉の意。

　なお〔淪〕は〈水没する〉〈滅ぶ〉〈漣（さざなみ）〉〈水の流れ〉〈混濁する〉の意。

　どういうわけか〈落（おち）魄（ぶ）れ〉を示す語は探すと一杯あるんだけど、成功者というものがそれだけ期待や嫉（しっ）妬（と）を集めてきたって事なんだろうか、それとも誇りというものがそれだけ尊重されてきたって事なんだろうか。

━─━─ № 15-21 (2,098) ─━─━

　　〖こける〗（カ下一段動詞）

【転（こ）ける】⚠　 #2,248

　〈躓（つまづ）く〉〈転ぶ〉〈｟物理的に｠転げ落ちる〉の意。

　転じて〈失敗する〉の意。

【倒（こ）ける】⚠　 #2,249

　〈縦状でなければいけないものが横状になる〉〈絆（ほだ）される〉の意。

　転じて〈陥（かん）落（らく）する〉〈失敗に終わる〉〈ないがしろになる〉の意。

━─━─ № 15-23 (2,100) ─━─━

　　〖ぎゃくせつ〗（名詞）

【逆（ぎゃく）説（せつ）】⚠　 #2,250

　〈説明とその結論が直感に逆らうように相反しているが道理としては間違っていない理（り）窟（くつ）〉〈一見間違っているようだが実際には正しい理（り）窟（くつ）〉の意。

　本来は一般に謂（い）う〝急がば回れ〟〝逃げるが勝ち〟の類型を指すものだが、しばしば他の類型の論説と混同されるもの。

　例えば、〝Ａである〟に対する〝Ａではない〟〝Ａとは逆向きである〟は、それぞれ「反（はん）義（ぎ）（否（ひ）定（てい））、対（たい）義（ぎ）」で、ともに「反（はん）対（たい）」とも呼ばれる。

　また、〝ＡであるものはＢではない〟に対する〝ＢであるものはＡではない〟は、「言（い）い換（か）え」または「推（すい）量（りょう）」。

　あるいは、〝Ａであり、Ｂである〟に対する〝Ｂであり、Ａである〟は「並（なら）べ替（か）え」または「提（てい）示（じ）順（じゅん）修（しゅう）辞（じ）」。

　もしくは、〝ＡかＢか〟は「二（に）元（げん）論（ろん）」。

　以上はいずれも［逆（ぎゃく）説（せつ）］ではなく、何らかの説に反する説は「反（はん）説（せつ）」と云（い）うもの。

　語を区別できていないと論説も当然狂うので注意されたい。

━─━─ № 15-25 (2,102) ─━─━

　　〖おこがましい〗（形容詞）

【癡（おこ）交（が）ましい】⚠⛏　 #2,251

　〈身の程知らずである〉〈差し出がましい〉の意。

　一般に｛烏（お）滸（こ）がましい｝と表記されるが、歴史的背景を踏まえないと「烏（お）滸（こ）」に〈傲（ごう）慢（まん）である〉との意味合いが生じないため、別途適当な字を当て支（が）うもの。

━─━─ № 15-27 (2,104) ─━─━

　　〖なしごと〗⛏（名詞）

【做（な）し事（ごと）】⚠⛏　 #2,252

　〈目標を定めて実行する人為〉〈仕事〉の意。

━─━─ № 15-29 (2,106) ─━─━

　　〖かけひら〗〖かけら〗（名詞）

【缺（かけ）片（ひら）】【缺片（かけら）】⚠⛏　 #2,253

　〈何かから欠け落ちた破片〉〈かけら〉の意。

【欠（かけ）片（ひら）】【欠片（かけら）】⚠⚯✗　 #2,254

　語義不相応のため遣うことを推（すい）奨（しょう）しない。

　この表記では〈断片の抜け目（⁉）〉のような意となる。

　〔欠〕は本来〈欠（あくび）〉〈間が抜けている〉であり、転じて〈全体のうちの一部が毀（こぼ）れ落ちて抜け目がある状態〉の意。

━─━─ № 15-31 (2,108) ─━─━

　　〖けむたい〗（形容詞）

【烟（けむ）甚（た）い】⚠⛏　 #2,255

　〈煙がとても煩（わずら）わしい〉の意。

　転じて〈煙に囚（とら）われたかのようにとても煩（わずら）わしい〉の意。

━─━─ № 15-33 (2,110) ─━─━

　　〖いちゃもん〗（名詞）

【諍（いちゃ）物（もん）】⚠⛏　 #2,256

　〈諍（いさか）いを誘発させるもの〉〈言い掛かり〉の意。

　一般には漢字を当てずにかな表記されるが、当てるとしたらこうではないかという表記を提案するもの。

━─━─ № 15-35 (2,112) ─━─━

　　〖あまた〗（名容詞）

【夥（あま）た】【夥（あまた）】⚠　 #2,257

　〈甚（はなは）だしく多量に〉の意。

　組成は〔餘（あま）足（た）〕であり、ここでの「足（た）」は〈充（じゅう）足（そく）する〉の意で、かつ過去完了を示す助動詞「た」の語源。

【剰（あま）た】【剰（あまた）】⚠　 #2,258

　〈過（か）剰（じょう）なほど多量に〉の意。

　語源は〔夥（あまた）〕。

【夥（あま）多（た）】⚠✗　 #2,259

　同義のため［夥（あま）た］［夥（あまた）］を遣うことを推（すい）奨（しょう）する。

　なお｛夥（あまた）｝一体での古語であり、その古語において音訓混在した「重（じゅう）箱（ばこ）読（よ）み」の形で存在していたと理解するのは難しいと思われる。

　辞書的な古文書においても現代辞書と同様、誤解のまま語が説明されている可能性は否定されるべきではない。

【数多（あまた）】⚯✗　 #2,260

　同義のため［夥（あま）た］［夥（あまた）］を遣うことを推（すい）奨（しょう）する。

　なお｛数多｝一体での熟字訓であり｛数（あま）｝という読みをする理由は無い。

━─━─ № 15-37 (2,114) ─━─━

　　〖きいきい〗〖きしきし〗〖ぎしぎし〗（副詞）

【吃（きい）々（きい）】⚠⛏　 #2,261

　〈かん高く鋭い声を連発して〉の意。

【軋（きい）々（きい）】【軋（きし）々（きし）】【軋（ぎし）々（ぎし）】⚠⛏　 #2,262

　〈｟堅い物がこすれあう事で｠かん高い音が生じて〉の意。

━─━─ № 15-39 (2,116) ─━─━

　　〖きふう〗〖きっぷ〗（副詞）

【気（き）風（ふう）】【気（きっ）風（ぷ）】【気（き）っ風（ぷ）】⚠　 #2,263

　〈性格や心意気〉の意。

　〝「気風」は｛きふう｝ではなく｛きっぷ｝だ〟との説があるが、原語としてまず［気（き）風（ふう）］があり、それを江（え）戸（ど）時代の人達が｛きっぷ｝と崩しただけで語義はまったく変わっておらず、そしてこのように崩した場合の本則的な書き方は「真（ま）裸（はだか）」を｛真（ま）っ裸（ぱ）｝と書くのと同様［気（き）っ風（ぷ）］であるので、逆に〝「気風」は｛きっぷ｝ではなく｛きふう｝だ〟と説く方がどちらかと言えば妥（だ）当（とう）ではある。

　ただまあ通じりゃ何でもいいわけで、〝ちゃうねん〟って言ってる人にいちいち〝それは「違います」だろ〟とか訂正入れてまわったところで何にもならんので、言い方自体は正直どうでもいいです。

　　　　◆◆◆ 中節 ◆◆◆

━─━─ № 15-41 (2,118) ─━─━

　　〖あらずんば〗（接続詞）

【非（あら）ずんば】⚠　 #2,264

　〈そうでないならば〉の意。

　〈否定される〉の意の「非（あら）じ」の仮定形「非（あら）ずば」の崩し。

　なお〈肯（こう）定（てい）される〉は「是（あ）り」で、その仮定形は「是（あ）らば」。

　これを合わせた〈肯（こう）定（てい）と否定の二元事象〉を「是（ぜ）非（ひ）」と云（い）うもので、「是（ぜ）非（ひ）も無（な）い」とは〈肯（こう）定（てい）か否定かと論じれる要素も無い〉の意だが、これを約（つづ）めてまた〝是（ぜ）非（ひ）〟とか云（い）うの正直まぎらわしいのよ。

━─━─ № 15-43 (2,120) ─━─━

　　〖きちがい〗（名詞）

【気（き）狂（ちが）い】⚠　 #2,265

　〈気質を狂わせて正常な判断ができなくなっている者〉の意。

【気（き）違（ちが）い】✗　 #2,266

　語義不相応のため遣うことを推（すい）奨（しょう）しない。

　この表記では〈気質がそれぞれ異なる様子〉のような意となる。

　「色（いろ）違（ちが）い」と同じ類型の語であり、〔違〕は一般にその変（へん）遷（せん）が異常ではないものを指す。

━─━─ № 15-45 (2,122) ─━─━

　　〖みなごろし〗（サ変名詞）

【鏖（みなごろ）し】⚠　 #2,267

　〈ある群れを例外なく殺しつくすこと〉の意。

　原語は〔皆（みな）殺（ごろ）し〕。

━─━─ № 15-47 (2,124) ─━─━

　　〖おうさつ〗（サ変名詞）

【鏖（おう）殺（さつ）】⚠　 #2,268

　〈鏖（みなごろ）しを果たすこと〉の意。

━─━─ № 15-49 (2,126) ─━─━

　　〖まっとう〗（名詞）

【全（まっと）う】⚠　 #2,269

　〈不備が無いこと〉〈成立すること〉の意。

【完（まっと）う】⚠　 #2,270

　〈完了させること〉〈成立させること〉の意。

【真（ま）っ当（とう）】⚠　 #2,271

　〈曲がらずに向き合うこと〉〈正論であること〉の意。

　［全（まっと）う］の当て字とされるが、〈完全であること〉と〈真正面から事に当たること〉では意味合いがかなり異なり、区別が必要と思われる。

━─━─ № 15-51 (2,128) ─━─━

　　〖とつきとおか〗（成句・名詞）

【十（と）月（つき）十（とお）日（か）】⚠　 #2,272

　〈ヒトの妊（にん）娠（しん）期間〉の意。

　なお妊（にん）娠（しん）期間の起点は〝当たり〟と推定される性交日ではなく、最終月経の初日。

　誰（だれ）かの誕生日が九月前半周辺だとしたなら、聖夜にそのｓｹﾞﾌﾝｹﾞﾌﾝ

━─━─ № 15-53 (2,130) ─━─━

　　〖きょうこう〗（名詞）

【凶（きょう）荒（こう）】⚠　 #2,273

　〈大凶作〉の意。

【恐（きょう）慌（こう）】⚠　 #2,274

　〈大不況〉の意。

━─━─ № 15-55 (2,132) ─━─━

　　〖あくどい〗（形容詞）

【悪（あ）諄（くど）い】⚠⛏　 #2,275

　〈度を超えて程がきつい〉〈悪質なほど行いが過ぎている〉の意。

　漢字表記についてはいろいろ謂（い）われているが、荒唐無（む）稽（けい）なものが多いように感じられる。

　例えば〝「悪（あく）どい」ではない〟との説については、｛どい｝とは何かについて触れられておらず不完全であり、｛悪（あく）甚（ど）い｝と仮定するなら確かに〈悪に傾倒する〉の意となるが、音訓混在するため昔からあった古語の組成としては考えづらい。

　ほか〝「嗚（あ）呼（ゝ）諄（くど）い」の略である〟との説もみられるが、このように脈絡なく感嘆詞を接続させている組成の語がほかに存在せず、根拠も説明されていない。

　というか〈悪性のものである〉〈悪質である〉という意から、これは「悪（あ）し」だと真っ先に思い至りそうなものだが、そういった説がまったく見当たらないの一体何なんだろう。

━─━─ № 15-57 (2,134) ─━─━

　　〖かんゆう〗（名詞）

【姦（かん）雄（ゆう）】⚠　 #2,276

　〈悪知恵を働かせて英雄となった者〉の意。

　基本的に、達成された事柄以上に恨みを買っており、あまり手放しでは讃（たた）えられないどころか、後世になって盛大に叩かれまくる。

　偉業とは、結果だけでなく手段も問われるもの。

━─━─ № 15-59 (2,136) ─━─━

　　〖さんび〗（名詞）

【酸（さん）鼻（び）】⚠　 #2,277

　〈惨（むご）く悍（おぞ）ましく黯（いた）ましいこと〉の意。

━─━─ № 15-61 (2,138) ─━─━

　　〖きずつける〗（カ下一段動詞）

【痍（きずつ）ける】⚠　 #2,278

　〈毀（き）損（そん）する〉の意。

【傷（きず）付（つ）ける】⚠　 #2,279

　〈物理的に毀（き）損（そん）する〉の意。

━─━─ № 15-63 (2,140) ─━─━

　　〖びんじょうしぎゃく〗⛏（名詞）

【便（びん）乗（じょう）嗜（し）虐（ぎゃく）】⚠⛏　 #2,280

　〈相手の弱みにつけ込んで自身を正当化する虐待〉の意。

　転じて〈相手の汚点を捏（でっ）ち上げて加虐をおこなう身勝手〉の意。

　そう、ネットでよく見掛けるあれですけど、たとえそれが正当な言い分だとしても公益性が認められない事なら名誉棄損だし、それで相手が凹（へこ）んだら暴行だし、それで精神を損なったと医師が認めたなら傷害だし、実際のところこの手の悪質行為はふつうに訴えを起こされてるから大概に。

　ちなみに言葉で殴られることで脳が受けるダメージは、拳（こぶし）で殴られるのと何も遜（そん）色（しょく）ないことは医学的に証明されているが、そもそも肉体的な痛覚はそこまで人の心を蝕（むしば）んだりしないもので、例えばタンスの角（かど）に足の小指ぶつけて精神病む人はほとんどいない事が想像され、つまり肉体的か精神的かによらず〝不当性をはらむ関与が脳へダメージを与える〟と推定される。

　　　　◆◆◆ 後節 ◆◆◆

━─━─ № 15-65 (2,142) ─━─━

　　〖だけ〗（副助詞）

【丈（だけ）】⚠　 #2,281

　〈分量に応じて〉の意。

━─━─ № 15-67 (2,144) ─━─━

　　〖さえ〗（副助詞）

【添（さ）え】⚠　 #2,282

　〈それまでもが加わって〉〈それをもってすれば〉〈それをもってしても〉の意。

　〝それを添えることによって〟の意から。

━─━─ № 15-69 (2,146) ─━─━

　　〖やがて〗（副詞）

【軈（やが）て】⚠　 #2,283

　〈まもなく〉〈そのうちに〉〈時間の経過に伴って段階的に〉の意。

━─━─ № 15-71 (2,148) ─━─━

　　〖にのつぎ〗（名詞）

【第弍次（にのつぎ）】⚠⛏　 #2,284

　〈二番目〉の意。

　転じて〈主題から除（の）けて〉〈まともに取り合わず〉の意。

【二（に）の次（つぎ）】✗　 #2,285

　意味を誤解されやすいので遣うことを推（すい）奨（しょう）しない。

　前提知識なしに見たならまず間違いなく〈next of two（三番目）〉と理解するはず。

　ここでの「次（つぎ）」は〈次回（next（ネクスト））〉ではなく〈番目（order（オーダー））〉であり、だから正確なところは「二（に）乃（から）次（つぎ）」ではなく飽くまで「二（に）之（の）次（つぎ）」、つまり「second（第二次）」となる。

　……解りづらいわ！　という事で［第弍次（にのつぎ）］との熟字訓を提案するもの。

━─━─ № 15-73 (2,150) ─━─━

　　〖さいころ〗（名詞）

【賽（さいころ）】⚠　 #2,286

　〈振り転がして決をとる道具〉〈dice（ダイス）〉の意。

　組成は〔采（さい）転（ころ）〕であり、｛賽（さい）｝が音読み、｛賽（さいころ）｝が訓読みである。

　通常、正六面体のそれぞれの面に別々の目を振り、それを転がしてどの目が上になるかで決を采（と）るもの。

　ただし形状はそれに限らず、百面体とかいう超ニッチな物も存在し、これは精密につき値段が高いが、球状に近いので振ったあとなかなか止まらず、そのまま机から落下して衝撃による変形で台無しやつ（かなしい）。

　ほか、coin（コイン）toss（トス）に用いられる硬貨もこれに該当する。

━─━─ № 15-75 (2,152) ─━─━

　　〖もほう〗（サ変名詞）

【模（も）倣（ほう）】⚠　 #2,287

　〈造形をまねる〉の意。

　〔模〕は〈木型〉転じて〈見本〉の意。

【摸（も）倣（ほう）】⚠　 #2,288

　〈所作をまねる〉の意。

　こちらの意味で［模（も）倣（ほう）］と表記するのは字義不相応。

　〔摸〕は〈手探り〉〈写し〉転じて〈手本〉の意。