第2話 裏切りの夢

俺は、羽田一馬25歳で、彼女は生田凛23歳。来月7月23日は彼女の誕生日。その時、プロポーズをしようと思って、今日は銀座の宝石店に婚約指輪を探しにきた。

2年間小遣いを節約して貯めた百万円が予算。やっときたこの日、頬を染めてドアを開ける。・・ショーケースの中には大小色々の指輪・・どれも綺麗で〜只ただ見とれるばかり・・・

「こんにちわ〜お探し物は指輪ですか?」

女性の店員が愛想よく声をかけてくる。

「はいっ・・こ、婚約の・・」

「おめでとうございます。では、色々聞かせて下さい。」

「はい、何でもどうぞ」

「ありがとうございます。お年は?」

「24になります」

「お肌は白い方ですか?日焼けで小麦色とか?・・・」

「え〜と・・白いかな、で、細くて綺麗な指です〜」

「ふふふっ、綺麗まではお聞きしていませんよ・・」

「あっ・・済みません」俺は、一層

顔が充血して・・・色々話してから

「では、8号で用意しますね、で、デザインのご希望はありますか?」

「いえ〜ここで見て、探そうと思って〜」

「ご予算は、おいくらくらいですか?」

「え〜一応百万円で・・・」

店員は、4カ所のショーケースの中から、3点の指輪をケースの上に並べる。

「どれも、85万円です。ちょうどセールをやってまして、定価は105万円のものです。」

そう言われた。中央部の大きなダイヤ、プラチナの台座、周りを取り囲む小さな六つのダイヤ・・・また、リングのなんとも言えないような素晴らしく格調高いひねり・・

一目で気に入った。カットも素晴らしい!

彼女に似合いそうだ!「これにします!」

「ありがとうございます。只今、お包み致しますので、少しお待ち下さい」和やかに言いながら奥へ下がってゆく。

俺は、顔を熱くしたまま、ドキドキしながら待っていた。


いきなり、目出し帽の男・・手には拳銃・・・バンバンバン天井に撃つ・・・キャ〜悲鳴

俺は、手をいきなり掴まれ「おまえ・・これでガラス割って石を全部カバンに入れろ!」と言われる。

「え〜そんな・・出来ない!」

途端に足元に〜バン〜撃たれた「死にてえのかー!」と犯人。

「ヒィェ〜」俺は、仕方なく、カナヅチでガラスをガシャ〜ンと割る。宝石を鷲掴みしバックに入れる。

隣のショーケースも、その隣も・・・

俺は、都度、済みません、済みませんと店員に謝り続けながら・・

ウ〜ウ〜・・サイレンが!

「やばっ!おい!・・逃げるぞ!」

エ〜ッ!なんで引っ張るんだ!こいつ!

玄関前にエンジンかけっぱなしの車・・「ほらっ!乗れっ!」

助手席に座ると宝石入りのバックを投げてよこし、キキキ〜ッ急発進!「俺の運転はプロ並だから、見てろ、パトカーなんて直ぐにまいてやる!」

赤信号無視!「うわ〜っ!ぶつかるう〜」ガシャ〜ン、ドォーン、キキキ〜ッ・・・俺は、慌ててシートベルトを締める。犯人をみると、エ〜ッ!ベルトしてやがる・・「シートベルトするんですね!」

「バカか!プロ並って言っただろうが!プロは必ずベルトするんだっ!」

「え〜っ!」なんだこいつ!

ベコベコの車を無理やり高速運転。

パトカーは見えなくなった。が、空にヘリが・・「ヘリだっ!」俺が叫ぶ!

「なにぃ!」と空を見上げる犯人。

あっ、黙ってれば良かった!・・失敗!

「くそ〜っ、山だ!山へ逃げるぞっ!」

その後も信号無視しながら、ぶつかりながら・・百キロもだして・・1時間・・2時間・・

富士山の裾野の樹海みたいな〜ヘリが見えなくなる。

「なぁ〜犯人さん・・何でこんな?」

「結婚すんのに、金要るんだよっ!」

「こんな〜喜ばないんじゃ?」

「オレみたいな男でもいいって・・だから、無理しても・・」やけに素直・・

「俺は、婚約指輪買いに・・なぁ〜自首したら、半分やるからさあ〜一緒に指輪買いに行かないか?」

「お前、人良すぎ!バカじゃん」

「良いんだ〜凛は、分かってくれる!」

「なにぃ〜!りん、だとぅ・・・」

ウ〜ウ〜・・パトカーだ!何台も、何台も

思わず、俺「わ〜テレビドラマみたいだあ〜っ!」

「バカやろ〜っ」右頬をガッツリ殴られた。

ギャア〜鼻血があ〜ドロ〜ッと流れる。

「ティッシュ!どこお〜」叫びながらあちこち探す、後ろの座席を見ようとして、身体を捻ったら、カーブで身体が運転席側に流れる。

「バカやろ〜っ」叫ぶが間に合わず、右側へ道路から飛び出して樹木へ真正面から突っ込む。ガシャ〜ン〜・・「おい!、起きろ!」

俺が気付くと、エア〜バックが開いてる。

「逃げるぞっ!」暗示をかけられたように、自然に身体が反応する。

走る!「待てぇ〜!止まれぇ!・・」警官が沢山いる。

「もう、ダメだよ!諦めて、捕まろう!」

バシ〜ッ!左頬がうわ〜っ!

「黙って、言う通りにしてろっ!」

目の前に公園だ!遊具の後ろに隠れて銃を構える犯人・・「ダメだよ!警官を撃っちゃ!」俺が叫ぶ間もなく、バンバンバン・・

打っちゃったあ〜呆然と俺。

「助けてぇ〜、僕は犯人に人質にされてるんだあ!」バシッとまた殴られる。

「うっせぇ!一連托生っ!お前も犯人だぁ!」

バンバンバン・・警官のひとりが、わあ〜っ!叫んで倒れる。「たにおかあ〜っ!救急車だぁ〜っ」叫ぶ声。

「ざまあみろ〜!」

ギ〜ン、ギ〜ンと遊具に警官の発砲したタマか当たる。今度は明らかに狙ってる。

足元にもビシッと弾ける!

やばい!撃たれる!

相手は警官だ!

ギャ〜ア・・犯人が後ろに飛ばされ動かなくなる!

俺はパニックになった。頭の中は真っ白。

「わあ〜っ!助けてぇ〜!」叫ぶ俺。

バンバンバン・・えっ?なぜ、撃つんだ?

俺はバックを持って、正面に突っ込もうとしている。助けを求めてるんだっ!

エッ?正面にいる。凛?俺の彼女の生田凛だ!

「止まれっ!」と叫んでバンと俺の足元に凛が撃った!

俺はバックをかざして、り〜ん叫んだ。

バア〜ンと銃声・・俺は胸を撃たれ後ろへ飛ばされる。

凛は銀行に勤めてたはず?しかも、恋人の俺を銃で撃つ?・・・そんな、ばかなっ!・・・あ〜これは、夢だあ〜

なら、死ぬ前に覚める・・もう、早くさめれや!・・だから、胸撃たれたのに、痛み感じないもん。はははっ・・覚めろ!

凛が屈んで、俺の脈をみてる。

そして・・「ふふっ、面倒なやつ、ふたり、いっぺんに片付いた!これで、彼と暮せる・・・」

俺には、彼女がそう呟いたように聞こえた!

・・そんな・・・バカな!・・・ふふっ〜やっぱり夢・・・


生田刑事!なんだこの男?強盗して、撃たれて、なんで笑って死んでる?



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