第8話 冒険者ライナー



 最初の印象は良くない。

 あれだけド天然を晒したから。


 だが、腕は確かで、採集ではこんもり持って帰るし、ゴブリン討伐はランクCのキングをもソロで狩ってきた。


 あっという間に実績を重ねて、ランクをGからCまで上げて、ダンジョンではソロで無双している。



「残念よねぇ。」


「何がぁ?」

 受付嬢のアルマとディアナがカウンターで書類の整理をしている。


「かなりの優良物件なのに、アレじゃあねぇ。」


「あー。アレかぁ。」

 とライナーを見ている。


 天使は皆中性的な顔をしていて、女性が少ない。

 個性はいろいろなのだが、平均的に女性向けの人気があるのは天使の特徴と言える。


「そりゃね。昨日もソロでランクBを狩って来てたでしょ。あんなに稼ぐ人いないもの。」


「じゃあ。唾付けとけば?お幸せにね。」


「なによそれ。やめて。」


「きゃははは・・・」



 聞こえてますよー・・・

 すみませんねぇ。残念なアレで!



 このギルドでソロでランクBを狩ってくるのはライナーだけになっていた。


 そもそもランクCから上は、ランクCの魔物はランクCの冒険者パーティで倒すと言う意味だから、ソロで狩ってくるという事は、それよりも上という事になる。



 だけどいくらソロで実績を重ねても、剣や魔法がうまくても、協調性が無いという判断がされて、ランクはCからは上がらない。


 SS級のドラゴンやリバイアサンなんかでも倒したら話は別なのだが。



 うーん。

 パーティ組むかぁ。




「パーティの募集ってどうやってするの?」


「何ですか。突然。」


「ディアナ。説明してあげてね~♪」


「よろしく。」


「覚えておきなさいよ。」


「掲示板にパーティ募集の紙があったら、その人と交渉するのが早いわね。自分で募集するなら、この用紙に欲しい職種とランクを書いて貼っておくといいわ。」


「そうか。どこがいいかなぁ・・・。」

 ちらっとディアナを見る。


「なに?わたしに聞かれてもさぁ・・。あ。そういえば。」

 ごそごそと書類の束を出してきてランクBの討伐依頼を見せる。


「大型のキメラ。ランクBね。これを討伐してほしいのよ。」


 言いたいことは分かる。パーティを組めとおっしゃっておいでなのですね。


「ん・・・んん。うん。行ってくるよ。」

 と依頼書を持ったまま去ろうとするライナーをを捕まえる。


「ちょっと待て。だからさ、これをパーティー組んで狩って来てって言ってるの。」


 面倒臭そうにいう。

「こんなの私一人でいいよ。」


「あら。逆らうの?ランク下げるわよ。」


「すいません。パーティ組ませていただきます。」


「分かれば、よろしい。」

 と満足そうに勝ち誇る。


「プッ。なにコントやってんのよ。」




 正直に言って面倒だけど、どうせ、ランクを上げるためには通らなければ行けない道だ。


 どうでもよい仕事になっちゃったので、適当に書いて掲示板に貼り付けた。





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