第7話 街の冒険者ギルド



 街に入るのには、助けた人が世話を焼いてくれた。


「この間、天から落ちてきたばかりで・・・その、すみません。」


「いや・・・なんというか。お気の毒に。」

 殴られてボコボコになった人に言われると、キツいものがある。


「あっ。いや・・。そうだ。うちはこの街で商店をやってて、私はその孫なのですが。」


「ですので、お礼と言っては何ですが、服とかいろいろ必要なものを用意させていただきます。」


「それはありがたいです。」


「それで天使様はこれからどうするつもりなのですか?」


「どうって?落ちてきたばかりで、何も知らなくて。良かったら教えてほしいのだけど。」


 冒険者とも付き合いはあるそうで、天使ならば、冒険者は自由に仕事が出来て良いらしい。

 決まったところで平和に生活するならば、行政官が働き口としては良いのだそうだ。


 まあ、ここへ来た時から、魔物や悪魔を倒して回るのは決まってはいたのだが。



 冒険者用の雑魚寝する部屋を宿に決めて、冒険者登録するためにギルドに向かう。



 街は人間が7割を占めているが、他に亜人がいた。

 獣のハーフにバンパイアのハーフまでいた。


 数は少ないけど、堕天使もいた。


「天使さんギルドに登録ですか?初めてですよね?」

 受付の女はギルドの札が首に掛かっていないのを見て言う。


「よろしくお願いする。ここへ来たばかりだから、何にもわからなくてさ。」


「あー。それは大変そうですね。まあ、がんばって。じゃあ・・これにサインと職業と種族とわかる範囲でスキルとかできることを書いてください。」


「ん?職業?天使業だけど?」


「あー・・。違います。アーチャーとかマジックキャスターとか戦士とかです。」



「ぷっ」

 近くで聞いてた他の冒険者がたまらず吹き出す。


「バカ。何が得意かって事だろが。」

 と言ったのは体格のいい堕天使だった。


「前衛と後衛。前衛ならウォーリアー、後衛ならマジックキャスターかアーチャーかモンクか聞いてんだよ。」


「・・・。どれって・・・。」

 正直、どれも同じくらいなのだ。

 バーチューズ様に直接に鍛えてもらったから一応、完璧になったはず。


「じゃあ・・・。とりあえず何でもできます。」


「じゃあってなんだよ。そんなわけないだろ。真面目にしやがれ。」

 堕天使はイライラしてきた。


 とりあえず名前だけでも書いておこう。

 今考えた名前だけど。

 とくるっとカウンターに向きを変えてペンをとって書き出す。

 Rainer っと



 ドン! 

 カウンターに堕天使が拳を叩きつける。

「お前・・・。聞けよ。」


「わたしはライナー。悪かった。ここに来たばかりだから何もわからん。」

 と名前を書いた、羊皮紙の登録用紙をみせる。


 この場の皆は、このライナーと名乗った天使がドのつく〝天然〟なのはわかった。




 とりあえず・・・

 ウォーリアーっと。


 また、面倒なのが来たと、受付嬢は肩を落とした。




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