第5話 美しい地獄



 落ちた地獄の世界は美しかった。

 深い森に美しい川があって、厳しい環境ながらも生き物が活々としている。


 ぜんぜん悪くない。


 むしろ、天が味気なく感じる。




 ドミニオンが話しかけてくる。


「天使よ。なぜ、そこにいる。自ら行く場所ではないはずなのに。」



 私は思った事を話す。

「ドミニオン様。私は確かめたかったのです。私に罪が存在するのか、否かを。」


 ドミニオンが答える。

「強いて言えば、その罪を疑った事がお前の罪と言えよう。」


 私はハッとして言う。

「申し訳けありませんでした。この罪は償わなければなりません。どのようにすれば良いでしょうか。」


「気に病まなくて良い。誰にでもそのくらいはある。天使でもな。」


「気が済めば戻ってくるがいい。」


「ですが、私には飛ぶ事が出来ません。戻れないのです。」


「そうだな・・・。」

 少し考えて言う。


「地上は美しい。どうだ。しばらく、その世界を見て回って、人間も魔物も悪魔も見てくると良い。今のお前にはいいかもしれないぞ。」



 中位の天使が言うとは思っていなかったので、びっくりしたが、私はとても嬉しかった。

 この美しい世界で、いろいろ見て回る事が出来る。


「よろしいのですか?天に戻らなくても。」


「ドミニオン。何か面白い事やってるね。」

 天からスローンズが話しかける。


「あー。君かぁ。落ちちゃったの?それは災難だったね。あ。でも、ドミニオンの言う通り、直ぐに帰る事は無いよ。ゆっくりしてきな。」


「だそうだ。だが、そこに行ったからには使命を果してもらおう。」


 少し不安になったが、使命と言われてしまわれたら、天使として役目を果さないといけない。

「どうすればいいんです?」


「悪魔と魔物を倒してこい。そうすれば自然と飛べるようになるかもしれん。」


「飛べるように・・・?」


「そうだ。力を付けるのだ。そうすれば自分で戻って来られるはずだ。」



「そんなことが出来るんですか?」


「ああ。素質はあっても、まだお前には力が足りていない。力を付けるのだ。そして、自分の力で戻ってくるがいい。」



「・・・ありがとうございます。必ず戻って見せます。」

 最初は言葉が出なかったが、何とかお礼だけは言えた。


「がんばれよ。」




 地獄に来たショックと美しさへの感激。

 そして、罪はない事には喜んだが、わたしは無力感に苛まれた。

 一度にたくさん感情が沸いてパニックになりそうだ。







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