第4話 堕天使じゃない!




 天使にだっていろいろとあるんだ。

 みんなそれぞれの悩みを抱えたり、理不尽な結果に悲しんだりしている。



 私の場合は力があっても、制御できずに落ちてしまった。


 そう。この地上に〝落下〟したのだ。




 私が生まれて間もない頃。


「我々よりもすばらしい力を持っているな。しかし、この子には飛ぶ力が弱い。」

 一人の大天使が言う。


「ええ。でも、育ってみないとわかりません。」

 違う大天使は様子を見ようと言い出した。


「いいえ。悪魔の力を少しだけ感じる。地獄が妥当です。」

 また違う大天使は地獄に落とそうという。



「この子には罪がない。地獄は罪人が行く場所だ。」

 そう言ってドミニオンが現れて、落とそうとする大天使達を止める。




 そして、天に残った私は誰と会う事もなく、幾年も牢獄のような場所で育った。


 羽根が生えてきたが、場所が天では飛ぶのが難しいみたいだ。



 ある日、天使の子供の仲間が一緒に飛ぼうという。


 子供たちは自由に飛んで楽しそうにしていて、私はうらやましかったが、ふと、ドミニオン様の言葉が脳裏に浮かぶ。



「この子には罪がない。地獄は罪人が行く場所だ。」


 うそだ。

 わたしは何かの罪を犯したんだ。

 だから飛べないんだ。



 そして、下を見る。

 地獄は美しい世界だが、厳しい世界でもあるという。


 地獄なら飛べるし、罪だって償えるのではないか・・・。

 そう思うようになった。



 その思いを払拭するために、バーチューズ様に様々な知識を教わった。

 世界の全てを知ったけど、罪は消えたようには思えなかった。




 試すことにした。


 もし、飛べずに落ちたら私には罪がある。

 落ちずに飛べたら罪は無く、天に住む資格があると。



 天の端へ行き下を見る。

 一度堕ちた天使はここにはもう戻る事は出来ない。

 自分に罪がある事が怖かった。


 さぁ。やってやるぞ!


 なかなか勇気の出ない足を前に出す。

 そして、羽ばたいて飛んだ・・・。


 飛んだ!


 確実に空高く舞い、音の速さで飛んで地平線へ飛んでいける。

 天使の誰よりも力強く、高く、早く。




 しかし、戻ろうと反転している時だった。

 急に錐揉み状態になり方向が定まらない。

 やはり、いくら立て直そうとしても、制御が効かずに落下していく。



 そして、地上へ落ちてしまった。

 それがキメラを狩る1年前だ。





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