ラノベかマンガか乙女ゲームかは分からないが

見るからに悪役ちっくな造形のわたしのすることは1つ。


清く正しく真っ当に生きること。


どれだけ見た目が悪役ちっくでも,

品行方正な貴族の令嬢を問答無用で諸悪の根源にはしないだろう…多分。




幼女の中身がアラフォーとバレないかチキンレースだと思った『晩餐』は

どれだけ溺愛されているかを身にしみて分からせられただけだった。


娘を返せと言われ,それが不可能と分かるや『やっぱり流行病で死にました』と処分されるかもしれない!!なんて,身構えていたのだがアホくさいと思うほど

両親の娘LOVEは激しく,また夫婦仲も凄ぶる良い。


よくある『悪役令嬢』の素養の一つ,家族仲の悪さ,はないみたいだ。

あとは,甘やかされておバカになる,だけど

中身がアラフィーで断罪にビビり続けていれば,その心配もなさそう…か??


心配かけた謝罪と宰相として流行病対策に奔走していた父を労って,

お行儀良くちょこんと頭を下げたら…

うちの子天才!!と胴上げでもしそうな勢いで抱き上げられてクルクル回りだし

キレイに整えたドレスのフリルが一瞬でクシャクシャ。髪も跳ねまくって母がたしなめるまで止まらなかった。


父は愛情表現?感情表現?が激しい人らしい。見た目若々しくキリッとした眉と目つきが男らしい人なのに。実は残念な人の匂いがする。


姿見で確認した自分の姿から想像できる通り,両親もキラキラしい美男美女の夫婦だった。

『二次元の登場人物をリアルにするとここまで現実離れするのか』と,

この世のものとも思えない美貌に目が眩む。


目覚めてから目にするこの世界の住人は,誰も彼もが美男美女。

屋敷内の清掃や洗濯などをする下働きの人ですら,各パーツは整いバランスよく配置されナチュラル美人か可愛い系ばかりだった。


ちなみに,この下働き(掃除や洗濯などの家政全般)をする女性がメイドと呼ばれ

似たようなことしてるけど,もっと身近で直接接触するようなことするのが侍女と呼ばれているっぽい??


メイドは地元住民の勤め先で,侍女は富豪や豪農,下級貴族などの女性の行儀見習い

要は,大きなお屋敷に住む貴族さん家は,いろんな身分の若い娘さんの就職先と今のところ認識している。


閑話休題。


両親の娘LOVEで揉みくちゃにされながら,幼女の記憶にあるテーブルマナーに従い食事を済ませ

お行儀良く『ごちそうさま』をして静々しずしずと退出!!

両親は愛娘が奇跡の生還して舞い上がっているのか,

とにかく回復して良かった,お姉ちゃんになっても親には甘えても良いのだ。と涙ながらに心配をしてくれて,不審に思う素振りもなかった。


貴族としての礼節を持ち,しかし,決して他人行儀ではなく親しみも感じられ

3歳の娘相手でも一個人として対応する。

前世の家族が決して最低だったり毒親だったりではなく,ごくごく一般的な家庭環境と家族仲であったが

ここまで『子供』の自分に『親』が丁寧に対応するとは思わなかったので

めちゃくちゃ居心地が悪かったのが正直な感想。


これが貴族として正しいのかは分からないけど,

少なくともこの家では『こう』なのだと学んだ晩餐だった。


そもそもこの幼女はまだ3歳。

子供らしい愛らしさと多少の我儘はあれど特出するほどの個性はまだ発生しておらず,これから性格やら自己が形成されていくのだ。


そして,それは中身がアラフォーわたしである以上,

大人しい品行方正な御令嬢になっていく…いや,して行く。


自分の,あるいは家族や働いている人たちの未来を守るため

悪役令嬢としてではなく,優等生令嬢と成長し

断罪からの追放も,没落して領地没収もされないために!!


やっぱり未だに,どのラノベでマンガで乙女ゲームだったのかは不明のままだ。


だけど,前世の知識を頼りに,内政チートとか生産系の発明とかしつつ

頼りになる娘,品行方正で優等生な令嬢として地位を確立して,

来るべき『ヒロイン登場』に備えよう。



決意も新たに,出てくる料理を口に運びながら家族の団欒をしているが


凄いなこの父,涙ぐみながらも優雅かつ上品ににメインディッシュのお肉を食べている。とんでもない神業だ!!

母も貴婦人スマイルで優雅な手つきなのに,口へ運ぶのは止まらない。

2人とも黙々と食べているだけでなく

時に互いの話に返事をし,時にわたしに話をふり…優雅な貴族のお食事なのに大きめのお肉をサラリと完食している。


幼女の自分には柔らかく煮てから焼き目をつけたものが,一口サイズに切って盛られていた。

大人顔負けの美しい盛り付けされているが,随所に幼児対応の料理にサービスの高さが窺える。

貴族の神業の食事風景と高レベルのサービスに圧倒されながら,

晩餐の時間は,優雅かつハイスピードで食べ物を消し去りながら過ぎていった。




デザートの可愛い小さめパフェまで食べたら,幼女の体はもう限界だった。

満腹で眠いのだ。

ついでに言えば,無事に中身(アラフォー)がバレなかった安心感から緊張の糸がきれさらに眠い。


お行儀悪くも,スプーンを持ったまま船を漕ぎ始めたわたしを,微笑ましそうに母が抱き上げ父が付き添い部屋に戻ってきて

ひらひら寝巻きに着替えさせてもらいベッド入れば,3歳児の目蓋はもう保たない。



おやすみなさい,また明日。

願わくば,この世界が悪役令嬢(暫定)なわたしに優しい世界でありますように。

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