第7話 ブッダ、こんにちは

 手持ちの薬を飲みまくり、そうに転じた頭をうつ状態に戻したつもりだ。3日間を費やした。モグが仕事に行くのも禁じた。(モグ、3日も休んだら手取りが……大変だぞ)


「もう大丈夫ですね」

「モグ、なんだおまえのその他人行儀な話し方は……?」

「あなたは今後があるご身分のお方なので」

「なにが今後だ。なにが身分だ。知ったことか。僕はおまえ達のエサ代を稼がなければならないんだ。ブッダと話すのにお金は貰えるのか?あ~ん?1銭にもならなければ仕事に行くぞ。僕はおまえ達のエサ代を……」

モグは泣きながら男の弱所を突き、気絶させた。この世に彼ほど自分達のエサを心配してくれる人はいない、とぐったりと横になっている彼を泣きながら布団まで引っ張って行った。

「まだ、早過ぎた。ゆっくり休めていなかったのかも……ブッダ様からの説法も控えているし、もともと気が小さいから……」

 モグはいくらかは反省していた。ただ彼と一緒ならブッダ様からの使命も天秤にかけてしまいそうな自分がいた。精神病の彼とブッダ様、普通は比べようがないのだけれど……

彼のうちの一家のエサ代を心配する、真っすぐな思いにモグは随分とまいってしまった。


「もう少し休ませよう、それと話し方は元に戻そう。少し急ぎすぎたわ……」


 また3日が過ぎた。


「どんな感じ?」

「ああ、モグ。世話になったな。今度は多分、大丈夫だ。前回とは違うのがわかるんだ。飯は美里か?」

「そう」

「そうか。そうか。わかった。それじゃブッダと話すことになるのかな?」

「そうよ」

「おまえ、話し方、元に戻したのか?」

「うん」

「そうか。そうか。それがいい」

「どんな話しなのかわからないが、地獄へ床が開いて真っ逆さまってことはないだろうね。現世でいくらか片付けないといけないことがあるからね、まあ、死ぬ以上に大切な用事なんてないんだろうけど……」

「それはないわ」

「そうか。質問はそれだけだ。いつでもどうぞ!」

するとモグが素早い動きで彼の弱所を突いた。

「またか。またそれか。苦しいのに……」


 モグは気絶した男を咥えてブッダ様の元へ筋斗雲で旅立って行った。


 途中、男は気がついた。先にブッダがいるのがわかったが笑ってしまった。なぜならブッダは200mくらいの身長でこっち見て笑顔だったからだ。30mの笑顔、頭はパンチパ―マ、グラサン、アロハに短パン、靴はニューバランスを合わせていた。

「アハハッ、嘘だろ、本物か?」

「やめてよ。ブッダ様に失礼よ!」

「でも一般的なイメージと違いすぎるよ。なんかもっと神々しいじゃん」

「それは造り上げられたイメージであってブッダ様はファッションに敏感なの!」

「細かい所まで見えてきた。腕時計してる……なんだ?うそだろ!チ―プカシオだ。お金があるのか、ないのかわからないがおもしろい選択だ。ファションに合っている」

「そろそろ黙って。着くわよ……」

「は~い」



 ブッダは身長180cmまで縮小した。歓迎の気持ちを表すために大きくなっていたのだ。何処まで大きくなれるのかとの問いへの答えは無量大数としか言えない。


「お待たせしました。ブッダ様」

「ぜんぜん。今日、機嫌がいいの。機嫌悪かったら今頃あなたはカエルになってるけどねプ~フフフ」

「はい。申し訳ございません」

「お待ちしておりましたよ、山口 徹也さん」

「初めまして山口です。宜しくお願いします」

「はい。あのチ―プカシオほどコスパに優れた時計はないのよ。月差0秒だからね。月差15秒の時計を自動巻きで何百万円もだして買う人の気がしれない…とある人が話していたわ」

「すいません。クスクス」

「うんうん。今日は機嫌がいいの。機嫌が悪かったら……今のあなたには手は出せないわね。立ち話ですむ内容ではないから中にはいりましょう。山口さん、お酒の方は?」

「好きです」

「あっそう!じゃあ、ビールでも飲みながらね」

と言って3人は建物の中に入って行った。建物は昔話に出てくるようなおどろおどろしさがあった。しかし外観以外は電球はLEDを使用するなど、時間が交錯していてどんな話がでてくるのか分からなかったが不安より楽しみが勝っていた。また、ブッダらしいというかブッダの教え通りのお出迎えであった。





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