8-2

石本くんへ


 お元気ですか?

 潮間は何もない、陰気な街だと聞いています。わたしのせいでそんなことになってしまって申し訳ありません。本当に、反省しています。酔った勢いだったとはいえ、大人として、女性として恥ずかしい行為でした。あなたを傷つけてしまったみたいで、本当にごめんなさい。けれど、いいわけみたいになってしまうけれど、あのとき言ったことは本当の気持ちです。

 わたしはあなたが好き。どうしてなのかはわかりません。恋することに、理由なんて必要でしょうか。わたしはいらないと思うの。あの、ふたたび出会った夜ではなくて、わたしは、最初に出会った内定式の夜の親睦会のころから、あなたが気になっていました。そのことを覚えてくれてなくてとても悲しかった。この悲しみはあなたにわからないでしょう。おそらく、わたしがあなたを好きな原因のひとつが、わからないことにあるのかもしれないです。わたしは石本くんを知りたい。わからないから、知りたい。あなたのすべてを知りたいし、教えてほしいのです。それはいけないことでしょうか。

 父に石本くんのことを正直に話しました。あんな事件を起こすんじゃないと怒られました。けれど、もし、石本くんがわたしの想いに応えてくれるというのであれば、千歳に戻すと言ってくださいました。

 真珠は宝石だけれど、いろいろなものに使えます。お葬式の時に使われるような大きくて重たいものばかりではなくて、小さな真珠も多く出回っていて、指輪に最適なのです。もし、千歳に戻ってきたら、美しい指輪を作りましょう。約束します。

 お返事、待っています。

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