冷たい肉そば

 山形が好きだ。

 だから「そうだ、山形行こう」と思いたって、ドライブがてら出かけるのも珍しくない。もっともいまはコロナ禍で、ガソリン価格の上昇も懐に痛いので難しいけれど。


「山形が好き」と人に言うと、たいていは「山形ってなにがある?」と返される。そのたびに回答に困ってしまって、「ええと……米沢牛に、芋煮に……」と煮え切らない答えをしてしまう。芋はぐつぐつと煮えているのに、だ。


 こんな反応しかできないのがもどかしいけれど、私のなかの山形は「美味しい」、これに尽きる。なかでも、河北町を中心に食べられている冷たい肉そばがイチオシだ。



 肉そばというと、人によって思い浮かべるものが違うと思う。甘辛く炒めた豚肉が乗ったお蕎麦や、同じく豚肉の入ったこってり系ラーメン。でもこの冷たい肉そばは、冷たいお蕎麦に薄切りの鶏肉が乗ったお蕎麦である。

 つゆは普通のお蕎麦と同じく醤油ベースだけれど、濃厚な鶏ダシが特徴。冷えているものだからつゆの表面に油が浮いていて、そこだけすくって飲むと甘い風味が口内に広がる。

 はじめて食べたとき、「なんて美味しいんだ!」と思ってしまった。


 山形から帰ってきて、こっちでも同じものはないかと探してみた。でも、どこにもない。ご当地グルメなんだ、当たり前だ。

 お店にないなら作ればいい。軽い気持ちで、私の挑戦が始まった。



材料

 鶏もも肉……1枚

 水……300ml

 めんつゆ(4倍濃縮)……100ml

 酒、みりん……各大さじ1

 だしパック……1包

 ネギ……適量 

 そば……1人前


手順

 1.鍋に水、めんつゆ、酒、みりんを入れ軽く煮立たせる

 2.(1)に鶏もも肉とだしパックを入れ、火が通るまで弱火で煮る

 3.そのまま粗熱をとり、冷蔵庫で冷やす

 4.そばを茹で冷水でしっかり冷やし、水を切って丼へ

 5.表面に固まった油をとった汁を丼に注ぎ、食べやすく切った鶏肉とネギをのせる


 ・手に入れば鶏肉はひね肉(親鳥)を使う

 ・表面に浮いた油はしっかりとったほうがさっぱりする

 ・たっぷり使いたいので、つゆは多めの分量で記載


 何度か試行錯誤したけれど、まだまだ(仮)状態。このレシピでは甘さが少し足りなかった。やっぱり頻繁に食べて、味覚を鍛えないといけないのか……。

 いつになれば本物の冷たい肉そばを食べられるんだろう。そんなことを考えながら7ブランドの某スーパーに行ったら、「山形風冷たい肉そば」と書かれためんつゆが売っていた。今度はこれを試してみようと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る