第26話「木戸孝允(きどたかよし)、長井雅楽(ながいうた)」
「あ?」
さすがに話しかけられたのに無視すると、感じが悪すぎるので、ちゃんと相手はしてあげることにする。
「あら、ご存知ありませんの? 我が
足利さんにそう言われて、僕の歴史オタクに火がついてしまった。
「知らないわけがないだろう! 元々、
オタク特有の早口で全部言い終えてから、『やっちまった』と思ったが、もう手遅れだった。
中学時代、こういう話をすると、女子たちはみんなドン引きして逃げていった。
あれ、待てよ、今は女子たちに逃げていってほしい状況だからこれでよかったのでは?
よし、この歴史オタク語りで女子たちは
しかし、僕の思惑とはまったく逆に、女子たちは「オオー!」と歓声をあげて、僕に拍手を送ってきた。
「ずいぶんお詳しくていらっしゃる、わたくし、感激いたしましたわ!! 男らしく低い声で語られる深い知識、まったくもって素晴らしいですわー!!」
「すごーい!!」
「頭いいー!!」
あれ? おかしいなぁ……中学時代はだいたい桂元澄の話をした辺りで、みんないなくなっていたはずなのに、ここだと誰もいなくならないぞ?
なんで?
「赤井様は、見た目だけではなく、学力の方も木戸孝允に似てらっしゃいますのね」
「そんなことないと思うけど……」
「あら、嬉しくありませんの? 幕末屈指の美男子と呼ばれている木戸孝允に似ているというのは、最上級の誉め言葉だと、わたくし思うのですけれども……」
「まあ、
「ながい……誰ですの?」
「ああー! ご存知ない!? 『
フッフッフッ……さすがにこれぐらいマニアックで、普通の人が知らないような人物の話をすれば今度こそ、女子たちは蜘蛛の子を散らしたように……
「すごーい!!」
「なんか知らないけど、かっこいいー!!」
なんでだよぉぉぉぉぉっ!!
長井雅楽の話をして喜ぶJKがどこにいるっていうんだぁぁぁぁぁぁぁっ!!
おかしいだろぉぉぉぉぉぉぉっ!!
なんだよ!?
村田清風が
『清い風』と書いて『清風』!!
ああ、この邪魔なJKたちを吹き飛ばしてくれるような風は吹いてくれないものか!?
「ああ、わたくしの知らないことを次々教えてくださる赤井様、素敵ですわ! それによくよく見てみましたら、先程来よりずっと読んでいらっしゃるのはジャン=ジャック・ルソーの『孤独な散歩者の夢想』」
いや、長井雅楽は知らないのに、ルソーは知ってんのかよ、足利さんよ。
それにさっきから気になってたけど、「赤井様」って何よ、「赤井様」って……
「この『
な、なんだってぇぇぇぇぇぇっ!!
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