第3話 嘘

ー由奈に告白され数分後…ー

俺は未だに迷っていた。

告白を受け入れるか、受け入れないか…

(でも……俺は由奈のことが……)

「本当に、俺で……、こんな身勝手な人間でいいんだな?」

俺はそう言って、フェンスの内側に戻る

「……うん。優しいダイくんがいいの」

「……分かった。」

「本当に⁉︎ ありがとう!」

由奈はそう言って俺に抱きつく

「さ、帰ろうか」

「うん!」

俺たちはそう言って階段を下っていった


ー自宅ー

「ふぃ〜、ただいまー」

俺は誰もいない部屋に言う

ま、寂しさを紛らわす為の何かだ

今日、もう一度この部屋に戻ってくるとは思っていた俺は、一種の懐かしさを覚える

「疲れた〜」

俺はそう言ってベッドに倒れこもうとすると

ガチャリ、と扉が開いた

「へぇ〜、ここがダイくんの部屋?」

という声で現実に引き戻される

そうなのだ、あの後由奈とは一緒に帰っていたつもりが、いつの間にか来ていたのだ

「……なんでここいんの?」

「だってダイくんの彼女だもん!」

何かよくらからないことを言ってるが、帰ってもらわないと色々な意味で困る

「あの、そろそろ帰った方が良くない?」

「何で?」

「何でって……。おばさんが心配するんじゃない?」

「大丈夫!『人生最後のお願いだから!』って言ったら基本的になんでも許してくれるから!」

「えぇ……。大丈夫なのか、それ?

それにほら、年頃の男女が一つ屋根の下で夜を明かすってのもアレだしさ」

俺がそう言うと

「え〜、そんなの関係なくな〜い?」

「いや……でも……」

「ってか真面目な話、私もう色覚とかが壊れ始めてんのよね〜、それでも、この夜道を歩かせるつもり?」

そこでその話をするのは本当にズルい

「……ハァ……。分かったよ……、その代わり由奈は下の階で寝ること、あとはおばさんに連絡しといて」

「はーい!じゃ、連絡したら晩御飯作ってあげる!」

由奈の手料理は小学生の頃に食べたことがある。めちゃくちゃ美味しかった

「でも……目、大丈夫なのか?」

「ま、夜道を歩くのがちょっと危ないくらいだから、料理するには全然問題ないよ!」

「そっか…じゃ、お願い」

「任せて!」

そう言いながら扉を開けて、由奈は台所に向かった



ー台所にてー

「はぁ……」

私は料理をしながらため息を吐く

一部の色が、まるで漫画のような灰色に見えるのだ

初めは一色がそう見えていただけだったが、今ではおおよそ半分ぐらいがそう見えるようになってしまった

もう数週間したら、もしかすると全てが白黒になってしまうかもしれない

もしかすると目が見えなくなるかもしれない

そんなの、絶対、いやだ!

「ダイくん……」

私は彼の名を口にする

彼は優しい、優しすぎる

今の私には、その優しさが重荷になって、それで……

「ダイくん、ごめん私……」

嘘をついているの………




つづく

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Lemon Hide @kintetsu16000

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