第6話 加入
岩垣先輩のバンドに加入したのは、高校2年生の冬休みの前だった。
ショウは大喜びしてくれて、ホダカさんも歓迎してくれた。
岩垣先輩は、
「わかった。お前が決めたんだから、中途半端なことはするなよ」
と釘を差してきた。
そして誰よりも私の決意に喜んだのは、若菜だった。
「絶対いい!よかった!!ねっ!」
若菜の喜び様に、私まで気持ちが昂る。
バンドに加入したことにより、私の生活は一変した。
体育会系かと思うくらいの練習の毎日。
岩垣先輩からボイストレーニングの課題を言い渡され、それに取り組むだけでも大変なのに、ショウに付いてもらって英語も学ぶように言われた。
「英語!?バンドに必要なの!?」
私の問いかけに、
「うちのバンドには必要。特にお前は。書けなくていいから発音を徹底的にショウに学べ」
岩垣先輩は強く返してきた。
彼が見てる先がただのバンド活動ではない気がしたのはこの時だった。
毎日スタジオに通いボイストレーニングと英語を学ぶ。
歌なんて加入してからほぼ歌っていない。
それぞれ個々に練習していた。
岩垣先輩はスタジオのキーボードに向かい、
ヘッドフォンをして黙々と作業をしている。
英語を教えて貰っている時に、ショウにこっそり聞いてみた。
「ねぇ、バンド活動ってどこもこんな感じなの?」
小さな折りたたみ机にパイプ椅子を並べて横並びに座る私とショウ。
ショウは肩をすくめる。
「違うよね?」
「うちは、崇の方針で何もかも決まるから」
私は別として、ショウやホダカさんはそれでいいのだろうか?
「ショウはそれでいいの?」
私の問い掛けにショウは優しい笑みを浮かべた。
「崇の野望が俺の夢でもあるから」
「野望?」
意味がよくわからない。
「崇は有言実行。現にイメージピッタリの美空を連れて来たから」
有言実行?イメージ?
私は自分を指差して首を傾ける。
ショウは小さく何度も頷いた。
ショウが言った岩垣先輩の野望。
とんでもない大きな野望に、自分が巻き込まれていたなんて、この時は知らなかった。
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