第2話 スカウト
「美空、何かやらかした?」
街が雪景色になった頃、日常にちょっとした変化があった。
一つ上の学年の
岩垣先輩はうちの高校では割りと有名だった。
女子にモテる顔をしていて、少し悪っぽくて、バンドを組んでいるらしいなんて噂がまた人気に拍車をかけていた。
そんな彼が、クラスメイトの男の子に私の名前を聞いていたらしい。
「何もしてないよ」
「じゃ、なんで岩垣先輩が美空の名前を男子に聞きに来るのよ」
「知らないよ」
若菜が必死に私に聞いて来る理由は、若菜が岩垣先輩に憧れがあるから。
「校内1、2を争うモテ男に名前を調べられてるんだよ?」
そう言われても、岩垣先輩に興味がない私にはただただ不気味なだけ。
何でわざわざ人に聞いて私の名前を?
その謎は、その日の放課後に解けることになる。
いつものように放課後は若菜とカラオケ。
それを楽しんでいる時だった。
若菜の次に私が歌い終わった瞬間、何の前触れも無く部屋の扉が勢い良く開いて人が入ってきた。
驚いた私と若菜は、お互いの手を取り合って構える。
「今、歌ってたのどっち!?」
部屋に入って来ていきなり質問するその人物は岩垣先輩だった。
ビックリし過ぎて声も出ない私達。
「どっちが歌ってたんだよ!?」
苛立ったように問い掛けられて、若菜が思わずなのか私を指差した。
「茅森か?」
岩垣先輩は真っ直ぐに私を見つめて問い掛けた。
「は、はい」
思わず応えたものの、ハッとしてその彼の言動に不快感が湧いてきた。
「な、何なんですか?突然無断で入ってきて─」
私がそう言い掛けたタイミングで、岩垣先輩がポケットからスマホを取り出して画面をタップする。
こちらの話など聞いていない。
挙げ句、電話をしだしたのだ。
「あっ、もしもし?俺。見つけた」
彼は電話の相手にそう話した後、
「今から落とす」
と話した。
落とす?
意味がわからない。
岩垣先輩は電話を切った後に、その場にしゃがんで私達の視線に降りてきた。
「茅森美空、俺の組むバンドで歌って欲しい」
突然のその申し出では、人生初めてのスカウトだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます