閑話 レオナママ目線で…ちょっと予告もあり

義母が亡くなったのは 娘が保育園に通っている時だった。


可愛がってくれた”おばあちゃん”の死がよほどショックだったのだろう。

私たちの隣で 顔にかけられた白い布をとった祖母の顔を見て以来 レオナの顔から表情が抜け落ちた。


少し大きい従兄姉たちは 意味が分かっているのかわかっていないのか 子供たち同士で過ごし、遺影の顔に

「お婆ちゃんらしい」

とか

「もっと優しい顏があったはず」

とか

「白髪が少ない」

などと 感想?注文?を付けあっては 笑ってさえいる


そのまま2泊ほど滞在したが 娘の表情が戻ることは無かった。


その後、喜怒哀楽こそ表現出来るようになったが 以前の明るさが戻ることがないまま 小学校に入学した。

新しい生活に 笑顔も出るようにはなったが 学校へ行きたくないと泣く事もあった。


ある日 小学校の近くを通りかかった時の事だ。

見覚えのある子供を見かけ レオナも来るかな?っと立ち止まって校庭を見ていると子供の声が聞こえてきた。


「レオナちゃんって 変だよね?」

「うん 気持ち悪い」

「レオナちゃん 泣きすぎだよね?」

「ばかみたいだよね」

「いっしょに遊ぶのやめよう」

「うん そうしよう」


子供の言う事だ。

今日はたまたまケンカでもしたのだろう っと自分に言い聞かせつつ 娘の姿を待つことなく家に帰った。


気を付けて見ていると レオナが楽しそうに学校から帰って来ることが無い事に気が付いた。家では楽し気にすごしているが、登校時に不調を訴える事も度々あった。


もちろん 学校に相談したがそんなことは無いと一蹴された。

クラスが変われば 担任が変われば と期待したが レオナが楽し気に登校する姿も 参観日に友達といる姿をみることも無く 私の妊娠を期に 隣区に引っ越した。


 新しい学校は 前の学校ほど休むことも無く 泣いて帰って来ることも無かったが やはり 楽しい学校生活とはならなかったようだった。


 もう一度だけ 仕切りなおしてみようと 中学入学時に本人の希望もあって中学受験した。入学した錬心学園はレオナに合ったようで 毎日登校し笑顔も見せてくれるようになった。そのことに 私も夫もほっとした。


それでも もう少し社交性をつけてくれないかと、児童センターで紹介された市内のローズガーデンの中にある「ローズ 仲良しスクール」に月に2回ほど通わせることにした。



 娘は思春期 反抗期であるはずなのに 私に対して「嫌」と言うことは殆どない。 私への要求もほとんどない 娘がひたすら大人しく息を潜めるように生きている姿を 私も夫もどうすることも出来ず ただただ 見守っていた。


そんな娘が 夏休みに入ってから変化を見せた。


”明日もガーデンへ行きたい”と言ったのだ。レオナから WANT という要望を聞くなんてめったにない事だもちろんOKした ”みたい本がある”というので 買ってあげようと提案したが それは却下されてちょっとがっかりした。


それから 娘は毎日のように ガーデンへ行きだした。


娘が『ガーデンの友達に進められて』 祖母の話を聞かせて欲しい と言った時は驚いた。

わが家にとって レオナの前で祖母の話をするのがタブーになっていたから…


ガーデンの友達 が レオナを変えてくれている。


「ガーデンで夏休みの宿題をする」「図書室にある参考書が分かりやすい」「テラスが居心地がいいから」


などと言う娘に、私も張り切って 娘の好きなサンドイッチを作った。

要求の少ない娘の為に 私がしてあげられる数少ないことだと愛情をこめて作った。


「毎日 ありがとう かあさんの作るサンドイッチ大好きなの 」


そういわれることが とても嬉しかった。


そして このころから 娘は変わって来た。もちろん良い方へだ。


ズボンは暑いからっと言い訳の様にいいながらスカートをはき(確かに夏はスカートが涼しいけれど)髪をとかし 身だしなみに気を付けるようになった。


仕事に行く私たちよりも後から出かけて 4時のカフェの閉店には帰って来るのだから ガーデンに滞在している時間はそれほど長いわけでもない。


けれど レオナを変えてくれているのは ガーデンの友達だ!


今年のお盆には 10年ぶりに一家で 義母のお墓参りに行くことになった。

過度の期待をしないように、と、私は自分に言い聞かせながら娘の変化に心の中で歓声を上げる。


娘は確実に変わっている!!!


レオナにはそれとなく(出来ているか自信はないが)折に触れて


「ガーデンの友達 連れて来てもいいわよ」


と言っている 


もし 連れて来てくれたら どんな子だろうが(たとえ 髪を真っ青にそめて 顔中にピアスをつけている子であろうと 二十歳のお兄さんや 80のお婆さんであっても)大歓待するもりだ。


だが まだその機会には巡り合えていない。

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