第19話 臨時休園

7月下旬、レオンの保育園が3日ほど急遽 臨時休園になった。

突然の事でレオナの両親は休みが取れない。

レオナは出来れば家でレオンと過ごしてほしい と頼まれた。


「ガーデンのお友達を呼んでもいいわよ」


っと 母親には言われたが レオナは弟と過ごす事にした。


レオナがガーデンに来れないことを告げると トキはガッカリしたように見えた。

トキに表情が出てきたのか レオナがトキの気持ちを読み取れるようになったのか 若しくは レオナの願望か?


「うちに 来てみる?」

レオナの問いにトキが頷く。

トキは ガーデンの友達だし それ以前に誰にも見えないのだから問題はないだろう


皆で相談した結果 トキが風に飛ばされないように トキは理央につかまって移動することにした。レオナ 理央 トキの3人(?)で レオナの家に向かう


「送り狼じゃん♪」

理央が何故か嬉しそうに 歌うように言うのに誰一人反応しない。


「理央よりも 理央に集まって来る深淵に注意しろよ 理央はいろいろ引き寄せる磁石みたいなやつだからね」


ユキは理央が居ると レオナと二人の時と雰囲気も言葉遣いも少し違う


本当はついて行きたいんだけれど…と 心配げに3人を見たユキだが これから どうしても外せない用事があるのだそうだ。


チラリと病院の方を見たユキから ユキの家族が病院にいるのではないか とレオナは推測した。


レオナは 自分の妙な歩き方や行動について 人に触れてほしくないと思っている。

だから レオナも人のプライベートについては聞かない。

ただ いつかユキの方から いろいろと教えてくれる日が来たら嬉しいと思っている。


理央と一緒に歩いていくと 理央がユキから「砂鉄を集める磁石みたいなやつ」

と称されるわけが分かった


ガーデンから出て 左右を確認すると早速 スルスルと滑りながら深淵が近づいてきたが

 リオナがポケットの桜塩を一つまみ

「悪霊退散!」

と言いながら投げつけると 後退りしていった。


ん?悪霊退散でいいのだろうか?師匠は何と言っているんだろう?聞いておかなくては とレオナは立ち止まりノートに”師匠におまじないを聞く”と書き込んだ


ふう と一息ついて 駅への近道の駐車場へ抜ける階段を下りる。

駐車場の中ですれ違った人に トキが視線を向けて 何か言ったがレオナには父親より年上のおじさんしか見えない 


駅までは無事についたが 今度は理央がふらふらとホームの端っこへ向かうので 慌てて袖を引っ張る


「理央さん 危ないですよ」

「あ! なんか あっちにから呼ばれたような気がして」


っと 謝った。これでは どちらが年上かわからない


電車に乗ってからは 深淵に出会うことも無く、無事にレオナの住むマンションのエントランスにたどり着いた。

レオナは自室にトキを入らせて 待っているように言い、エントランスまで戻り 理央に会う


「無事に家にトキを迎えました! ありがとうございました」

「よかった! じゃあ 次は木曜日ね 午後だよね?1時に迎えに来るね。何かあったら俺の携帯に電話してね 最優先で取るから」


「理央さんの電話番号?」

「ほら レオナちゃんのノートに俺書いたじゃん あああ 覚えてないんだ?ショックだなああ」

「あ 思い出しました ソラのページですね。かしこまりました!」

「あとさ レオナちゃん 今日ここまでくる間 俺のこと 守ってくれて ありがとうございました」


長身の理央がペコリと頭を下げる


いえいえ と 恐縮しながらも レオナは 自分の視る力が 今日は役になったのかもしれないと嬉しくて ニヤニヤしてしまう。そんなレオナに 理央も笑ってじゃあね っとエントランスを出て行った



***


翌日 ユキは一人 テラスで遠い空を見ながら考えていた


ソラは何者なんだろうか?

ソラは ユキとレオナにとっては存在しているが 理央には見えない。それはトキも同じだから「霊」というものなのかもしれないと思う

 

7月と8月のお盆のころは ユキは「霊」の気配を感じる。深淵が見えるユキは「視える人」「霊感が鋭い人」だと言われているが その「霊」の気配と ソラの「気配」は明らかに違う



そこへ 理央が帰って来た


「ユキ~! 昨日はちゃんと レオナちゃん送って来たよん。一度は”悪霊退散”って空間に塩撒いてたからビビったけど… 危なく 線路に落ちるところを助けれちゃったよ ユキの塩も役に立ってたし ありがとさん 流石 ユキのお弟子さん」


”悪霊退散?!”ユキは深淵を悪霊と言った覚えは無い。悪霊と言うなら 面倒を持ち込んで よろしく~という一言で片づける理央の方がユキにとっては悪霊に近いかもしれない。


それに 前にレオナ言われてなかったっけ?深淵には”バディの所にお帰り”といって お帰り頂くのだと


それはそれで 今は理央との話


「それは何より。。。じゃあ そのお礼として 協力しろよ」

「何?」

「ソラの正体暴露」

「助けるの?」

「だって タスケテって聞こえちゃったから お前にも聞こえたんだろう?」

「ん 聞こえたのかな? 俺 聞こえないし 視えないんだけど??」

「お前に くっついて来るってことは助けてほしいから お前だって聞こえたからついて来るのを許したんだろう?」

「ん」

「で トキを助けてって言ったときに ”先に助けて”ってさ 本音駄々洩れだろ?」

「そっかあ ソラって素直じゃん 会いたいなあ」

「本当に お前が視える人だったらよかったのになあ」

「あ” それは遠慮します 俺 会いたいのソラとトキだけじゃんね」


「トキは 凄い子だよなあ 普通 守れるか? 70年だぞ  待っててねって約束 

それに比べたら ソラはヘタレだよなあ 1年でタスケテだってさ」

「やっぱり オトコはダメなのかね?」


「トキは 自分が自分だけのモノじゃないって理解しているんだよ。トキは両親の大事な自分なんだって ソラはそこが分かってるのかな? 人は人の命も存在も自分だけのモノじゃないんだよなあ」


ユキの言葉に 隣に座った理央も頷いた。



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