第5ー2話 6月最終日


レオナは珍しく 朝からウキウキしていた


レオナは10年 深淵に取り憑かれていたようなものだ。コミュ障も 挙動不審も全部 全部、深淵(アイツ)のせいだ

小学校を転校したのも 授業中に集中できないのも、両親が 何かと言うと心配げな視線をレオナに向けるのもアイツのせいだ


今日 あの。。。えっと 結城さん?に会えば 全てが解決するのだ。多分 レオナは普通の子になれるはずだ。


約束はお昼過ぎだが 待ってなんていられない レオナは母親に 図書室の読みかけの本が気になるからと言って、 図書室の開く10時にあわせて家を出た


家を出るときに レオナは願掛けをした 「家を出てから ローズガーデンの図書室に着くまでひとつも深淵に遭遇しなかったら 明日からはもう深淵に悩まされることはない」


レオナはいつも通りに あたりに目を配らせながら歩く 駅を下りてからローズガーデンまでの道を歩きながらレオナは左右に視線を走らせる 駐車場を突っ切って 階段を上って…ローズガーデンに入る直前に、もやもやとした深淵を見つけてしまった あああ あと一歩だったのになあ 残念


真っすぐに図書室へ行く、レオナの指定席も その斜め前の席も空いていた。最近 空いていないことが多かったから 空席を嬉しいと思うはずが なんだか肩透かしを食ったような気になる。


まだ 約束の時間まで2時間あるのだからとレオナは夏休みの課題を取り出す


2か月の夏休み「自由に過ごしなさい」という校風ではあるが 中にはガッツリ宿題をだしてくれる教師もいるのだ 


お昼の鐘が鳴る かなり集中していたらしく 思いのほか進んでいる課題に満足し もう少し切りのいいところまで片付けてしまおうと またノートに向かう




昼食を終えたユキが少し早い時間に図書室へ行くと、指定席(いつものせき)にレオナが座って勉強しているようだ。 


ユキは レオナを見て悪戯っぽい笑みを浮かべ 一度はレオナの横の席へ行こうとしたが 思い直したようで、レオナ前の席に座った。そして数学の問題を解く彼女を眺めていた。


レオナが 一区切りついて うーん と伸びをすると 向かいの席から

「すごい 集中力だね」


っとささやかれた。レオナは驚いて大きな声が出そうになるのをぐっとこらえて

「こんにちは」

と小さく言って、頭を下げる


「外にでようか?」


ユキに誘われて 図書室の外に出る


「レオナちゃんだっけ? カフェのテラスで話をしていいかな?」

「テラスでお昼を食べようと思っていたんで ちょうどいいです。 飲み物買ってきていいですか?」


レオナは アイスミルクティーを買ってくる。

テラス席にもレオナの指定席はある バラ園から一番遠い人気のない丸いテーブル。

いつも椅子が3つセットされている。

ユキは そのレオナの指定席に座って小さく手を振っていた


また指定席を取られた。。。けれど 今回は無理はしないで ユキの左側 椅子を一つ空けて隣?斜め前?に座る


「ここの席 眩しくないし奥まっているけどバラ園がよく見えるんだよね」


「知ってます」 っとレオナは心の中でだけ答えた

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