手紙を出した誰かが明かされた時、読み手の胸に何かを残す

おもんばかっているようで、どこか挑発的な手紙。
心違うようでいて、肝心なところは結果論でしか語ってくれない、手紙。

そのもどかしさが、最後の最後で、手紙の出し手の正体がわかったところで、ああそうかと、すとんと心に落ちてくる。
落ちてきて、安堵と高揚と人恋しさが、ないまぜになるような、不思議な気持ちにしてくれる。

軽妙な主人公の語り口とは裏腹な、深くて沁みる物語の結末は、きっとどんな読み手の心にも、暖かくて愛おしい“傷”を残すはず。

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