四季の清濁を併せて呑む

不思議なことが起こります。
主人公——美紗子さん宛に美紗子さんから手紙が届くのです。
そしてその内容は、美紗子さんの生活をタイムリーに知る人でなければ送ることのできないものでした。
いったい誰がなんのために?
そういった疑問を抱えつつも、毎日届く手紙に元気付けられる美紗子さん。
しかし、あるときを境に、美紗子さんは手紙に対して不信感を持つように。そして——

田舎から上京して頑張る女子大生の日常と成長を描いたヒューマンドラマ。
この物語を彩るために用いられた筆致は写実的でありながら芸術的。緻密でありながら軽妙。
旋律のように流れる文章に身を委ねれば、春のうららかさと乾き、夏の日差しと雨の匂い、秋の憂いと実りを感じることができます。そうして冬に至るとき、そこに待つのは凍えるような寒さと寂しさだけではなく、心華やぐイルミネーションとクリスマスソングなのです。

人生とはつまり、四季の清濁を併せて呑むことだと、私はそのように思いました。

そう言えば、芳醇な四季を味わい尽くすような物語であるにもかかわらず、タイトルとキーアイテムになっているのはカーネリアン。石の名前ですね。
移ろうものと移ろわざるもの。
有機と無機。
この対比を読んだあとに考えてみるのもまた一興。
読んだあとにも楽しみのを残してくれるのも、この作品の素晴らしい点だと思いました。

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