第18話 刺青の悲しい訳


「彼女さんとクリスマスディナー

だったんじゃない?」

と茉穂が話しかけると


「まあ・・・ん・・だな」

歯切れの悪い返答になんだかなぁ〜


「私、お兄ちゃんに迎え来て貰うからレストランに帰ってよ、お友達も

待ってるんでしょ。」



「ああ」


と、話していたら運良くタクシーがつかまった、ってか茉穂達の前で偶然降りたカップルがいて、入れ違いにタクシーに乗り込んだってはなしだけどね。


乗り込んだ途端泰真はウトウト

「ち、ちょっと、ちょっと

このタイミングでー、又寝るか?

普通!!」


ウトウト


泰真は又夢の続きを見る。

「あなたが茉穂さんですか?」


育ちのいい様なお嬢様が現れた

着物も上等で、中々の美人


・・・・「はい、どちら様です?」

茉穂は洗濯物を抱え川端まで行こうとした時不意に現れた女性に驚いた。



「泰真さんと別れて下さい

聞けばあなたが押しかけて来て

住み込んでるそうね。」


・・・「は?」


「泰真さんが言ってた

あなたが

子供の面倒見てくれてるから

貴方と別れられないって

稼ぎ女だし、

それに、女中兼子守り女が居なくなると俺が困るって言ってた、だから私と結婚したくても出来ないそうよ。」



「・・・」


「でも、安心して彼と別れて!

子供は皆ひきとります、その方が子供の為にもいいもの

こんな小汚い所でアンタに育てられて、貧乏させてしかも

あなた、子供に食料調達させてる

らしいじゃない、呆れる。

子供が可哀想と思わないの?」



「そんな、子供達が・・・

私を喜ばせようと頑張ってくれ」


と茉穂が言ってる隙に

彼女が顎をクイッと合図すると

ガタイのいい数人の男達が家にドカドカと入り込み、

子守りをしていた子供達を軽く抱え上げ、子供達は突然の事に驚き足をバタバタさせて声を上げて叫んだ!


「かーちゃんー、かぁーちゃん

助けてー助けてー

うぎゃあーうぎゃあー

かぁーちゃーん、

かぁーちゃーんーこわいよー

こわいよー」


「やめてぇー、やめてぇー

連れていかないでー」

驚き泣き叫ぶ子供達を軽く引っ抱えてヤクザふうな男達は1人1人連れ去った。


茉穂はやめてやめてとすがりついたが蹴飛ばされ踏み潰されているうちに、子供達の姿はアッと言う間に消えてもう泣き声さえも聞こえない。


髪を振り乱し泣き叫び踏まれた足を引きづりながら探しまわった。


どんなに足が痛くなって血が出ても

茉穂は泣きながら子供らを更に探し回ったが見つからない、何日も何日もそして探すのを諦めざる負えなくなった。


子供達がそれぞれ町を出るのを

見たと知らせてくれた人がいた。


その日から茉穂は病んでしまった。

子供は引き取られバラバラに

養子に出されてしまって、探す事も

出来なくなった。

泰真への愛情は憎しみに変わって行った。


茉穂は生きる気力もなくなって

しまった。

そんな日々が続く中、目を覚ますと


髷を綺麗に結って、上等の着物を着た泰真が枕元に座っていた。

すまんすまんと詫びる泰真は色男に

磨きがかかっていた。


子供達は継ぎ接ぎだらけの着物

茉穂もそうだ、今の泰真と並んだらやはり使用人と若旦那にしかみられない。そんなことを考えていると

泰真が、すまなそうにはなしだす。


「借金があつて、逃げられない

執拗に執着されて茉穂にも危害が

及ぶかもしれない。

だからもう会いに来れない」

としきりに謝っていた。


茉穂は「そう」冷たい声を出すと

アッサリと別れを承知した。


「もう貴方とは今世限り

二度と添いたくは無い!

もし、会う時が来たら

何処であっても貴方と分かるように

今度生まれる時は目印を付けよう


あなたと私の腕には叩きあったアザがある。


罪人は腕に線を入れるから

私達も子供を手放した罪が有るよね

罪は半分づつ、腕に刺青をれたら生きにくいだろうから

だから手首に刺青を入れて

生まれよう。

アンタとは会うべきじゃあ

無かった。


今度、二度と関わり合わない

ように印を刻んで生まれよう。」

泣き叫ぶように茉穂は更に続ける


「この刺青を見たらお互い関わり合わないようにしょう、アンタといたら、ろくな人生にはならない。

そうこの事実を、思い出すように‼️

来世こそ幸せに暮らしたい。


このアザの意味を覚えておきなよ!

アンタが私を裏切った

子供を捨てた

アンタの最低の証だから


子供達は腹違いの兄弟姉妹で私の子は居ないがみんな私の子なのよ。

大事に育ててきたのに・・

なんでなんで取り上げるのよー」



泰真は黙ってうなづいた。

尽くしてくれた茉穂に申し訳無かった。


でもそうしないとあの女の事だ

茉穂に何するか分からない!



寒い寒い12月の事だった。

ボロボロの長屋を出るとヒソヒソ

と行き交う人々が白い目を泰真に向けてきた。

泰真は茉穂の長屋に駆け戻って

叫んだ


「来世はきっと幸せにする

約束する、だからだから許してくれ」

そう言った。



茉穂は嬉しい涙・・なんか流す訳もなく「ザケンナークソ野郎💢」

と叫んだ!

💢ムカついたのか茉穂はそれ以来

憑き物が落ちたみたいに元気になり

ツテを頼って子供探しの旅に出て

それっきり長屋に帰る事は無かった。



ウトウトウトウト

「茉穂何処にいるんだ、茉穂

探しても見つからない!

すまなかった!」

泰真は切ない声をあげた。


「へ?ココだけど?」


「着きましたよ。」

茉穂は又泰真のタワマンに来た。


又コンシェルジュさんに頼んで警備員を呼んでもらい泰真を担ぎ込んで

もらった。


警備員さんはまたかーとは言わないが

呆れた顔をしてヤレヤレ


「茉穂、茉穂」

泰真は呼んでいた、なんか魘されているようで起こしても起きない。

せっかく魘されているのだから放つて置くことにした。


前例のようにやはり警備の人は

部屋まで連れて来てくれると泰真と茉穂を置いてピッと敬礼をして帰って行った。


「ありがとうございました」

と茉穂は頭を下げつつ見送った。


「そーんな飲んでる様子無かった

のになぁ」

タクシーに乗るまでは普通に手を繋いで・・・

「あれは地面が凍っていたから

よ、だから手を繋いでくれただけ

意味無い意味無い!!別に意味があった訳じゃない。」

と茉穂は泰真への気持ちが再燃焼しないように言い聞かせた。


ドアの向こうから見つめる目が四つ

ほらほらーぁ、居たぞ居たぞ!!

ドーベルマンがジーっと見ている。

茉穂も(ಠ_ಠ)ジーッと目を細め見つめる。


「食い物無いカラー

私も腹減ってんだカラー」

と犬に向かって茉穂は吠える。



食い意地の汚い茉穂と負けず劣らずな食い意地の張ったドーベルマン兄弟!


キッチンへ茉穂が進むと兄弟も付いてくる。

期待満載の O ーPEN The door

掛け声とともに冷蔵庫のドアを開ける。

ドーベルマン兄弟はピョンピョン

大喜びー

高級なメロン発見‼️

金持ちの冷蔵庫アルアル


オーオーオよく見ればローストビーフ

と、茉穂が手に取れば匂いが漏れたのか?ハッハッハッハと期待を込めた息遣いに気づいてアップルパイを食われてしまった事を思い出す。



デカイ冷蔵庫の前で

ドーベルマンが茉穂を挟んでスタンバイ、茉穂はローストビーフに伸ばした手を引っ込めた。


今取り出せば押し倒されて食われてしまう。

又右、左の兄弟をチラチラ見ながら最善の策を考える。

コイツらの食い意地は半端無い‼️


とりま、着物が邪魔だ。


あ、玄関に放置の泰真を思い出し

ジェスチャーで兄弟に

コイツ(泰真を指さす。)をハウス

そしたら (ローストビーフをみせて)

分けてあげる。


すると伝わったのか犬兄弟が泰真の首根っこのシャツを引っ張りズルズルズル


「おめーら、やれば出来るじゃん!」


調教師な気分!

ヨシヨシと褒めてやる、なでなでまでやらせてくれるのはローストビーフが食いたいのか?

ローストビーフの力か?

兄弟は、器用にカチャカチャカチャとドアを口で開けて毛布を取って来た。


茉穂は寝室を興味本位に覗いてみる

10畳程の寝室にはダブルベッドとクローゼットと姿見があるのみ。

グリーンのカーテンにブラウンの高そーなベッドに黒のダウン

ついでにクローゼットを開けて着れそうな服を見てみる。


黒の上下のスエットが目に止まる

「借りようっと!」


姿見を見ながら着物をとくベッドの上に帯、襦袢、補正のタオル、紐

振袖をパパパと脱いで行く!


「はぁー幸せー」

圧迫が溶けてラークチン

しばしベッドにゴロンゴロン

何故か着物を着たあとにはお約束の

リラックスタイム


ハッとして男性の部屋だと思い出し

着物を畳む。


髪をとくとクルクル

「これはコレで似合ってるかも

自分で褒めないと誰も褒めて

くれないもーん。」


と鏡の前でぶりっ子ぶってみる。

こうやれば彼氏できるかなウフウフ

後ろで見張っていた兄弟が

ウエーってしてるような顔が鏡越しに見えた。


「まあ、犬だから私の魅力、

分かるワケないか!」


泰真の黒のスエットは上だけでも長く膝下まであるって事は・・

クローゼットを焦ると赤の短パン発見短パンはクリーニングしてあるみたいで袋被っていた。

紐をギリギリまで閉めたら何とかいける感じ!


グルグルと腰で短パンを巻くとまあ

スネまでにはなった。


気を取り直して "台所台所"

ルンルンとリズムよく弾みながら

頭にはローストビーフのクレソン

に匂いをつけて犬への分け前を減らす作戦が浮かんだ。


クフフフフ不気味な笑いを浮かべ

クレソンにローストビーフの匂いをつけ兄弟に分け与える


食わない!

アレ⁉️


じーっとローストビーフの皿を持つ茉穂を睨んでくる。


「ウーンコイツら鼻が利くなぁ」


仕方なく茉穂パクッウメエー一枚

犬兄弟にハイパク ハイパク

茉穂パクッ

犬兄弟 パク パク

花占いのように茉穂と兄弟で食べる

問題は一個残らないようにする事

どうしたら・・・

平等に見せて不平等


最後に近づく3週目頃、茉穂はローストビーフを2枚重ねにした。

(冴えてるぅ〜)


茉穂2枚重ね、兄弟1枚パク 1枚パク

「ウヒヒ」

茉穂2枚重ね 兄弟はそれぞれ一枚また一枚と続く!はい茉穂二枚

アッとゆうまに終了‼️

兄弟に皿をヘラヘラとして諦めさせる。気持ち味が無い気がするが肉は

上質。


更に第二ラウンド

冷蔵庫のドアOーPEN

ドーベルマン兄弟もワクワク

しっぽの振り方が気合い入ってる。


冷蔵庫の中をよーく見るとクリスマスケーキ、ワインも冷えていて

デケェ、カニとかもある、野菜も沢山収納してあるって事は?


「クリスマスパーティ🎅か?」


泰真の部屋で

「クリパ」

って事は人が来る?

カニ鍋・・


暫くするとベルが鳴る執拗に喧しく

グッスリ寝ていたはずの泰真が

兄弟もワンワン吠えだしたので目を

覚ました。


酔いから覚めた泰真は「はい誰」

と聞いていた。


「俺、俺」

とザワザワザワザワ

エントランスの鍵を開けたのか

ドヤドヤと男女の集団が入って来た。

既にだいぶ出来上がった状態



「お前、いなくなるからさー

押しかけて来たぞ!」



「そうよ、約束のクラブに来ないし

来ないなら行っちゃおーって

話になったのヨ」


「アレ着物の彼女は?」


「着物?」

あ、とその時泰真は、茉穂とタクシーに乗り込んだのを思い出した。

咄嗟に携帯を握った所で腰までの

緩やかなカールのラベンダーカラー

の彼女はソファーに座る泰真の肩から甘えたように携帯を掴み


「今日は楽しみましょう

携帯はキ・ン・シ💋」


キッチンから覗いていた兄弟と茉穂は目をひん剥いて顔を見合わせた。

主がいる時は大人しいのかワンとも吠えなくなった。


泰真も楽しみたかったのかキッチンへとやって来た。

兄弟が並んで座っていたので茉穂は

兄弟の後ろに隠れた。

チラと兄弟を見た。

泰真は冷蔵庫の中をキョロキョロ


「あれ?犬用のローストビーフが

無い、無い?おかしいなぁ」


.。oOゲッ、あれ兄弟のクリスマスローストビーフだったのかよ、食っちゃった。

茉穂はどうも味が無かったはずだと

納得!

私なんか細切り食ってんのにローストビーフ

ー̀дー́ちっ💢贅沢!


兄弟のクリスマスローストビーフを食ってしまったのは悪かったが、兄弟も私のアップルパイを食っていたからおあいこ、おあいこ、な、な!!

兄弟の肩をパンパンとたたく!


「おっ、いい体してんなぁパンパン」

手の平を弾く弾力が筋肉質で気持ちイイ

訝しげな顔をしながら兄弟は我慢して茉穂をみていた。

犬とて多少はイタイ!


兄弟と冷蔵庫のドアのおかげて茉穂の姿は隠れていた。


泰真はシャンパンを出しワインを出しカニを出し予め用意してあった野菜を出し特上の肉を出した。


酒盛りが始まり泰真の友人らしき男子の隣には綺麗な彼女達が座って楽しく談笑していた。

泰真の隣にはさっきからモーションかけていた彼女が泰真に乗り上げるようにくつついていた。


"お前ら吠えろよ、やめさせて"


茉穂が2匹を睨むと耳を寝かせて降参状態。( ー̀дー́ ) ちっ💢役立たず

茉穂は犬に向かって小声で言う。


美味しそうな匂いがする、泰真を見るとイチャイチャしながらワインを飲んでいた。


「よーしケーキカット」

と切り分けられたケーキは誰も手を付けずそれぞれのパートナーと盛り上がり中


茉穂は膝歩きでケーキをゴッソリ

持って来た。


ワゴンの上に置いて

兄弟にも鍋から残った肉を手鍋に

移し取ってきてあげた。

「アンタらはケーキはたべれないから、こっち」


鍋の中の肉を差し出した。


「兄弟もパクパク食べる」

こいつらは満腹ってことは無いのかケーキを狙ってきた!

「待てぇーい!」

その一言に犬らは、一歩下がる。

くううぅうーん!!

アウアウと口をパクつかせている。


「犬がくうもんじゃないヨ

病気になったらどうする

バカチンが!」

つい金八先〇のモノマネで首を

ヨイショ!


「おめーら日本になれたみたいだな、おにぎり、くうか?」


「キューウウゥーン」

聞くだけ無駄だった、好き嫌いなし

のこの犬達に我慢我慢は通用しない

茉穂も犬みたいな食い意地だから

よ━━━━━━━━━く分かる‼️


「よし付いてこい❗」

耳をピンと立てて腰を屈め足を開き腹ばい気味に茉穂につづく!

茉穂、エル、アランが一列に腹を引きずり進むズーリズーリズーリズーリ


待てよ!ほふく前進が楽かも

ケーキで腹いっぱいだった茉穂は

腹が床にくつつき気味

兄弟も腹を引きずって、

ズーイ ズーイ ズーイ

1人と2匹はおにぎりを目指す


おにぎり山はもうすぐ、無駄にひろいリビングで、ほふく前進を伝授する。、

だいぶ進みが楽になる、兄弟も

覚えたての、ほふく前進で進む。


よーく見ると目指すコンビニのおにぎり山がお皿にてんこ盛り

犬に二個づつ茉穂は3個その頃には

みんな雑魚寝中だったので

堂々と腹を引きずりUターン

おにぎりは無事キッチンへ持って来られた。

口の中からおにぎりをだし包装に悪戦苦闘な兄弟!

仕方ないので茉穂が包装を開ける。兄弟は、チマチマと大事そうに食いだした。


クリパの盗み食いで腹いっぱいなのにまだくうか?


いやいや見た目

兄弟の腹も妊婦みたいに膨らんで

茉穂は兄弟の腹をなでなで


食い疲れたのか2匹はゴローン

だらしない顔をして


「もう、食えねぇー」

と言っているように腹を見せ天井を仰いでのびていた。



「オラオラ、犬なのに情けねー

なんて格好だー」

茉穂は小さく呟いた。


犬の足と茉穂の足を合わせて

コギコギ腹減らさねばコイツら

病気しそう。

準備運動が終われば

ボールを投げて走らせる


酒飲んで寝てるヤツらを飛び越えて

ボールを拾って来る。


間違ってコンと当たっても痛くない

のがビニールボール。

犬達も楽しそう。


半端目を開いた男がボール投げを

訳分からない状態で茉穂とチェーンジ 酔っ払いのアルアルなのか執拗に

くりかえしている。

酔っ払いって頭のネジが飛んでるからやり始めたら中々終わらないアホ状態。。



まあそのうちねるだろう。


さて、今のウチにお暇しようと茉穂は着物を取りに寝室へと向かう。



ウワッ!

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