第49話 誕生日会の真相
さて、どうしたものか。会うとは言ったもののユッキーが俺に一体何を聞きたいのか全く見当がつかない。まあ、信長と付き合っているのが事実ならおそらく奴に関する事なんだろう。でもなんで俺なんだ?次郎でもいいじゃねえか。あん時サイゼリアには次郎も居たんだ。次郎ではなくわざわざ俺に会ってまで聞きたいこと。
……。
考えても無駄だな。とにかく俺は俺でユッキーから情報を集めなければならない。信長に俺と会ったことを言ったのか。だとすればどこまで話したのか。そして、ユッキーといるときの普段の信長はあのままなのか。
異世界転生。確かあいつは配信で異なる世から来たとかぬかしてやがった。そんなもの全く信じられないが、あいつのあの尋常じゃない雰囲気。自分が織田信長であるということに疑いもなく、それが当たり前であるかのような態度。多田野信長には思えなかった。一体あいつに何が起こったのか。それもユッキーなら知っているかもしれない。
いらっしゃいませの声に顔を上げ、喫茶店の入口付近に目をやるとキョロキョロしている美しい肌の女性と目が合う。斎藤雪だ。
「すみません、待ちましたか?」
「いえいえぜ〜んぜん大丈夫っすよ〜。昨日ぶりだねユッキー」
「急に会って話したいなんてお願いしてすみません。まさかこんなに早く会えるなんて思ってもいませんでした」
「いやいや、昨日ユッキーとたまたま再会できたのは運命なんじゃないかって思ってさ。俺も会いたかったわけよ」
「はぁ……そうだったんですね」
それにしても、やっぱり綺麗だな。なんで俺は飲み会のときにこの子に惹かれなかったんだ。俺たち二人はコーヒーを注文し、一口啜ると同時にユッキーから本題に入ってきた。
「あの、早速なんですけど……。光安さんは信長さん、それに次郎さんと同級生だったんですよね?」
おいおい、やっぱり信長のことについてなにか聞きたいのかよ。まあこれは流石に想定内だが。
「同級生って言っても小学生のときに次郎は転校したからね。信長とは中学まで一緒だったよ。ま、特に仲良く遊んでたわけではないけど」
「そうなんですね。ちなみに次郎さんが引っ越したときのことを覚えていますか?」
「は?次郎が引っ越したときのこと?」
次郎の引っ越し?信長のことを聞きたいんじゃないのか?
「あー……小学校の何年生のときだっけな。三年か四年のときだったと思うけど。なんで?」
「なんで引っ越すことになったのかはわかりませんか?」
「さすがにそれはわからんよ。親の仕事の都合とかじゃない?」
なんなんだ?話が全く見えない。
「そうですよね……ごめんなさい。じゃあ……誕生日会のことは覚えていますか?」
「誕生日会?ちょっとちょっとユッキー。さっきから何の質問なわけ?誕生日会って一体誰の……」
「信長さんです。信長さんの誕生日会。光安さんは参加されましたか?」
……。
この女……。何が言いたい?直接会って話を聞いてみれば小学校の頃の誕生日会の話だって?バカバカしい。
「はいはい誕生日会ね。参加したよ。覚えてる。あんときはクラス皆で盛大にお祝いしたと思うよ。でも確か信長がブチギレたんだよな。あんな信長見たことなかったからそれは覚えてるわ。で、なんでそんなこと知りたいの?」
「待ってください。信長さんがキレた?誰に?」
「誰にって、次郎だよ。あいつがやらかしたからさぁ」
「やらかした?」
「あいつ、信長が作った模型に火をつけたんだよ。なんでそんなことしたのか知らないけどさ」
「火をつけた?……次郎さんが!?」
「あんときは大変だったなぁ。信長の模型は全部手作りで紙やらダンボールやらでできてるからまあ燃えるわけよ。しかも確かあれ、休日の学校の教室じゃなかったかな。先生が最初居なくて必死で火を消したもんな。教室はびしょびしょ。模型も黒ずみ。それで信長はブチギレたってわけ」
「……そんな」
今でもあの日のことは覚えてる。でもあれ……あいつ、なんで信長の模型に火をつけたんだっけ?
異世界に転生したと思い込んでる信長くん ケビン @kevin0831
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