第31話 第二回信長ちゃんねる生配信 その1

「やや、大変お待たせいたしました」


「遅いぞ、猿」


「よし、とりあえず揃ったな。信長様、今日はどういう内容を話すんですか?」


「観ている者の雑念を取り払う談話じゃ」


「……あぁ。ようはですね。まあわかりました。もう俺は二人に任せているので今日も頼みます。ヒデ、お前は特に暴走しがちだからくれぐれも気をつけてくれよ」


「次郎殿、その心配には及びませぬ」


「よく言うよ」


 開始3分前。以前の緊張と比べるといささかマシではあるが、それでもやはり心臓の鼓動は早くなる。今回はおそらく前回観に来てくれた人数より多くなるはず。


 _________________________________


「よし、準備はいいですか二人共。スタートを押します」


 っていうかあれ……ヒデ?


「ぶぅううううん!ぶぅうん!はろおぉぉぉ!あ、ゆ〜〜ちゅうぅぅぅぶぅぅ〜〜!どうも、信長様のちゃんねるへようこそ。それがしが信長様の最も信に値する側近。羽柴秀吉でごぉ〜ざぁ〜るぅ〜よぅっ!」


 お前……なんで画面に映ってんの?え、しかも何そのラッパーみたいな口調と手の動き。お前が前に出すぎているせいで信長が少しも映っていないんだが。



『秀吉来たあああああああーwww』

『秀吉思ったより顔オタクっぽくて草』

『え、信長様は??????』



 案の定、コメント欄が沸いている。既に1万人以上の視聴者が集まっているようだ。


「そしてそして〜それがしの後ろにおられますのは〜!あのっ!このっ!どのっ?そのっ!の・ぶ・な・が・さまよぅっ!」


「よう集まったのう。皆のもの」


 ……。


 おい、猿。だから見えてねーんだよ信長が。しかもいつもの挨拶をしているだけなのにお前のせいで信長も韻を踏んでいるように聞こえるぞ。そもそも何だこの紹介は。はぁーまた始まるのか……地獄の時間が。


「猿。持ち場に戻れ」


「ははっ!」


 で、結局お前は画面外へと消えるんかい。何しに出てきたんだまったく。


「さてさて、ではさっそく始めてまいりますかのう。本日は前回とは違う趣向でいきたいとそれがしは考えておりまする。多くの民から来た文の中からそれがしが責任を持って選定し、その文に書かれておる内容を読み上げまする。殿はそれにお答えいただければと」


 ……。


 前回と何も変わってねーじゃねえか。まあ、結局この内容が一番こいつらに合っている気はするが。


「儂が、第六天魔王。織田上総介信長である」


 ……え?お前、何挨拶するの忘れてたからってこのタイミングで言うわけ?っていうかその挨拶いつまでやる気?ねえ、それマジでやめたほうがいいよ。


「殿ぉぉぉぉぉぉ!!!殿ぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 だからお前はもういいよ、うん。だまっててくれ。こっちはお腹いっぱいなんだよ。


「猿、もうよい。進めよ」


「ははっ失礼仕りました。それでは参りまする。んーどれにいたすか。最初の文というのは最も肝心……お、これなどいかがか」



『秀吉は彼女いるの?』



 くそざるてめえこらあああぁぁぁ!!!!


「猿、どうなんじゃ?」


「やや、やややや!いやはやいやはや。急にそんなことを聞かれ申してもそれがしなんとお答えすればよいか……こ、困りまする」


 てめえが選んだんだろ。


「猿。答えよ」


「ははっ。殿が命ずるのであれば、それがしも答えないわけにはいきますまい。それがしは……お、お、おりませぬ……よぅっ」


 だろうな。


「で、あるか。儂は……。昨晩……できた」


 できたじゃねぇわあああ!!!!てめえ何顔赤くして照れてるんだこらぁぁぁあああっ!!!!


「さすがは殿!これにて解決。それでは続いての者にまいりまする」


 一体今ので何が解決されたんだ。っていうかそもそも前回の配信で彼女いるんですか?って質問された時「で、あるな」って既にいるって認めてただろ。



『信長さんと秀吉さんは本物ですか?w』



 お、これは面白そうな内容だ。

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