第30話 騒がしい朝

「信長様、朝からスマホばかり見つめてどうしたんですか?」


「……」


 どうしたんだろう。最初は何かをまた調べているだけなのかと思ったけど、どうも違うようだ。どちらかというと……待っている?誰かとLINEでもしてるのかな。


「信長様?聞こえてます?もしかして誰かとメールのやり取りでもしてるんですか?」


「うむ。雪じゃ」


「……ゆき。えっゆき?もしかして雪さん!?」


「そうじゃ。それがどうした?」


「え、なんで?っていうか雪女じゃなくて今雪って言いました?」


「たわけ。あやつからもう雪女と呼んでほしくないと頼まれたからのう。そもそもあやつの名は雪女ではなく雪であろう」


「ちょ、ちょっと待ってください。え、いつの間にそんな話したんですか?雪さんと会ったんですか?え、いつ!?」


「なんじゃ次郎。なぜ気になる?まあよい。昨晩のばいと中じゃ。たまたまあやつがおわりOWARIに来おった。じゃから飯に誘った。それだけじゃ」


「ええええ!!すごいじゃないですか!それで食事に行ったってことはもしかして仲直りできたってことですか?」


「ふん。そもそもあの女、怒ってすらいなかったわ」


「え?そうなんですか?でもあの日雪さんめちゃくちゃ怒っていませんでした?」


「どうやら違ったようじゃ。で、付き合うことになったというわけよ」


「なるほど。でも怒ってなかったんならよかったですね!」


 ……。あれ、今付き合うって言った?


「信長様……最後なんて言いました?」


「なにがじゃ?」


「いや、なんか付き合うことになったみたいなこと言いませんでした?」


「うむ」


「は?……え。付き合うことになったって……ええええ!?嘘でしょ!え、そんな事あります!?」


「驚くのも無理はない。儂も許してもらえたのであれば抱かせてもらえると思うておった。が、あやつは順序が大事というわけのわからぬ道理を儂に押し付けてきおった。じゃから仕方なく付き合うという手順を踏んだわけよ」


「いや、いやいやいやいや。そうじゃなくて!なんでまだ会って二回目なのに付き合うことになったのか。そこに驚いてるんですよ」


「はぁ。お主は女心というものがまるでわかっておらぬな」


「悪かったですね。でも、ホントによかったですね!俺、なんだかんだ応援してたんですよ。まさかこんなに早く付き合うことになるなんて思ってもみませんでしたけど」


 応援してたのは事実だ。信長にまさか彼女ができるなんて。しかもあの日会った色白で綺麗な雪さん。え、でも雪さんは今の信長が多田野信長が織田信長だと思いこんでるということを知っているのか?


 まあ、いいか。とりあえず、本当におめでとう信長。


「して次郎よ。今日も配信をするのであろう?」


「はい、あの日の配信の影響で今信長様のチャンネル登録者数は15万人を超えています。だから定期的に配信をしていきましょう」


「うむ。で、猿は?」


「はい……。ヒデもちゃんと来ます。彼のファンも少なからずいるようなので」


「で、あるか」


 今日は第二回目の生配信だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る