第21話  ユア・ストーンはリヒトの手に

 魔族の王とオルフェは、オルガが燃えて崩れていくのを見ているだけだった。


『よくも、俺の妹を!!』


 怒ったオルフェがトレヴィクに切りかかった。


『待て!!そのものが持つ剣は、魔法の匂いがする!!』


 魔王のガーランドが言ったが、オルフェには届かなかった。

 細い小振りな剣を突き立てようと、オルフェはジャンプしてトレヴィクの後ろに回ったが、タイミングを見計らっていたように、トレヴィクは剣を抜きオルフェの首を目掛けて切りつけた。

 簡単に、オルフェの首が宙を舞った。


「御免ね~秘蔵っ子たちだったですよね~その剣は、魔法で鍛えた剣だから、君たちには毒だったかもですね~」


 ベルナールは、一匹残った、魔族の王に降参を求めた。


「今、降参してこの国を出て行き、今後も人を襲わないと約束をすれば、見逃しますよ」


 魔族の王の顔は醜く歪んだ。


『誰が人間のいう事など聞くか!!』


 王は、変わった、口笛を鳴らし、城の中にいた仲間を集めたのだった。


 ベルナール達はあっという間に20匹くらいの魔族に取り囲まれてしまった。


「あれあれ、困ったですね~あれ!?水の乙女、可哀そうに、泣いてるじゃないの……」


「師匠が残虐なことするからでしょ!」


「あれは仕方ないことですね。水の乙女、ユア・ストーンは何処にあります?」


 <アルがまだ持ってるわ……>


 ベルナールはやれやれという顔をして、倒れているアルベールの懐を探して、ユア・ストーンを見つけた。


「水の乙女がいて、ユア・ストーンを持っててこのザマですかぁ~我が息子ながら、情けない!!」


 <アルは悪くないわ!!>


 莉乃はベルナールに反論した。


「うんうん、ありがとう。君は良い子だね、水の乙女」


 ベルナールはリヒトに近寄ってきて、彼にユア・ストーンをを渡した。


「師匠?」


「今までの君の水の精霊では不安でしたが、リノならば大丈夫でしょう。

 十分に、水の守りを布いてから、行いなさい。バックアップはします」


「では、火竜をここへ呼び出して良いのですね?」


「リヒャルト王子の許可は取ってあります」


 リヒトは、ベルナールからユア・ストーンを受け取ると、少し離れたところに行った。


「リノ、俺の周りに水の壁を作ってくれ。今から火竜を呼び出す。」

 <それって、とっても危険な事なんじゃないの!?>

「危険だ。だから、水の乙女に頼んでる。俺を水で包んで欲しいと。」


 リヒトの目は真剣だった。


 <分かったわ、やれるだけやってみる。>


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