第19話  助っ人

 透き通った身体ながら、水に入った莉乃はホッとした。

 一息つくと、オルフェがこちらを見ていのに気が付いた。


 時間を稼がなければならない……アルベールが何とか回復してくれるまで……


 ふと、水桶の水に目を向けると、王城の外の様子が映し出されていた。

 神経を手中して、前線の誰かを探そうとすると、リヒトが現れた。


「水の乙女だな。どこに居るんだ?アルベールは無事か?」


 <無事じゃないわ!!アルベールが大変なの!!私も……>


 その時、オルガが水桶の中を覗き揉んできた。


『誰と話してる?』


 <え……?>


 莉乃が顔を上げると、オルガの顔がドアップに迫ってきていた。


「水の乙女!みちを開け!早く」


 水面でリヒトが叫んでいた。

 鬼気迫るものがあった。


 <え!え?分かんないけど~リヒトをここまで連れてきて~>


 莉乃は水に懇願した。


『仲間を呼んだのか?』


『これは、早く契約してもらおう。我が名前はオルフェ・ディンだ。お前の名は?』


 魔族の双子が莉乃にすごんできた。


 <言わないわ!私はアルと契約してるのよ!>

『契約は切れている。名を言え!!この魔法使いの精気を全部抜くぞ!!』


 <ダメよ!!やめて!!>


 オルフェがアルベールの腕を掴みかかる瞬間、オルフェの服に炎がついた。

 驚いて、火の粉を掃うオルフェ。


 <リヒト!!>


「遅くなって悪いな!乙女。みちを広げて来たものだから」


 <リヒトは、火と水の精霊とも契約してるの!?>


「水は大した精霊ではない」


 リヒトは大したことがなさそうに言った。


「それよりもロイル家の若様に何してくれる?」


『うるさい!!お前も魔法使いか?』


「魔族のディン族は火に弱いって伝説は本当のようだな」


 リヒトは、手に炎を出して、魔族の双子を敬遠した。

 その間に、アルベールを自分の方に近付けて、魔族と距離を取った。

 だが、莉乃がついてこないので、ギョッとしていた。


「どうしたんだ!?水の乙女!!」


 <強制的にアルとの契約切られて、フリーにされてしまったの!!>


 呆気に取られていたリヒトは、しばし、じっとしていた。

 やがて、莉乃のいた水桶に小さな男の精霊が入ってきた。

 莉乃のことをすごく睨んでいる。


 <え……!?>


 <はやく!!あっちに行け!!リヒト様がお呼びだよ!!>


 その時、リヒトが叫んだ。


「早く来い!!俺の本当の名はリヒャルト・シグレーだ!」


 <だって、私はアルの……>


「アルベールは今は戦えない。今だけでも俺の所へ来い!!」


 莉乃は迷ったが、魔族と契約するよりは、ましである。


 <私の名前は水瀬莉乃よ。>


「ミナセリノ……だな。承知した。ミナセリノ、俺の左肩へ来い」


 莉乃は驚いた。

 この世界で、一度で正確に莉乃の名前を言える人がいるなんて。


 リヒトの左肩におさまって莉乃はビックリした。

 リヒトは四大精霊をコンプリートしていたのだ。

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