第15話  無敵だと思っているアルベール

 自分の水の精霊が次々と要求をかなえてくれて、今や、絶好調のアルベールである。

 父の日課の、行水を邪魔して怒られたものの、軍事会議にはチャッカリ顔を出していた。

 ロイル家の長男という事もあり、咎める者もいなかった。


 数で優っている人間は、シ-ドックの王城の包囲を少しづつ狭め、そこでとどめを刺すような作戦だ。


 大きなテーブルの中央に王城の見取り図があった。

 リヒャルト王子が、甲冑をつけて大人たちに交じってそこにいた。

 ベルナールの弟子のリヒトは、当たり前のようにいる。

 二人が、この場にとても馴染んでいることにアルベールは少し焦りを感じた。


「魔族の王は玉座の間にいます」


 アルベールが、後ろの方から声を出した。

 そこにいた一同が、アルベールを見た。

 アルベールは、ちょっとびっくりしたが苦笑いで誤魔化した。


「俺が王城に行ってきます。何なら、王の首も取ってきますよ!!」


「若いな。ベルナールの息子よ、相手は人に近い所属とはいえ、魔族ぞ」


 シ-ドック帝国からリヒャルト王子と共に未来を託されて、脱出して来たトレヴィク・グレンという人物だった。父のベルナールよりもガタイが大きくて、騎士隊長をしていたという。


「だったら、余計に早くガツンと行ってやろうぜ!!」


「城下には、まだ民が残っている。包囲網を縮めて突入するのが良い」


「こっちには、水の乙女もいるし、ユア・ストーンもあるんだろ?」


 トレヴィクの言葉に効く耳を持たないアルベールである。


「でも、ユア・ストーンで何を召喚するんだ?」

「火竜だよ」


 リヒトが、声をかけてきた。


「火竜!?」


「ディン族は古より、水の属性だと言われてる。だから、逆の属性の火竜をよんだらどうなるかな……」


 アルベールはジッとリヒトを見つめた。


「俺が火竜を呼び出して、やっつけてクラア!!」


 その場にいた者は、皆ベルナールを注目した。


((あんたの息子、何とかしろ!!))


 の白い眼付だった。


「アル……あっちでリヒャルト王子と話しておいで……」


「嫌ですよ~今の僕は無敵です!!!ユア・ストーンがあればさらに無敵。

 父上の持ってる、ユア・ストーン借りますね」


 手癖の悪いアルベールは、父が大切なものをマントの内側のポケットに隠すことを知っていた。

 そしてビンゴ!!ユア・ストーンはそこにあった。

 スルっと、ベルナールの近くまで来て、ユア・ストーンを抜き取ると、風の親方を呼んだ。


「これで、ディン族をやっつけて来ます」


「こら~王城で召喚なんかしたらどうなると思ってるんだ!!」


「大丈夫!!大丈夫!!」


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