第14話  水の路(みち)

「よしっ、リノ!!水のみちを作ってくれ!!俺も父上の所へ行くぞ!!」


 <え~!?いいのかな~~>


「今の俺に敵なしだ。リノがいればなんだって出来る!!」


 <それは、言い過ぎでは……?>


「い~や!!俺は父上のいる前線に行くぞ。リノ、水のみちを開け」


 アルベールが言い出したら聞かないことを、莉乃も知っていたので、莉乃は木の根元に湧いた泉に手を浸して、


 <水のみちよ、開け。行き先は、ベルナールさんのいる場所よ>


 泉の水が渦を巻いて、口を開けたようになった。


「さすが!!上位のリノ!!」


 アルベールは上機嫌で、迷わず渦の中へ飛び込もうとしていた。

 その様子を見ていた妹のベルベッティーヌが、慌てて泉までやってきたが、

 アルベールは既に飛び込んだ後だった。


 魔法で喚んだ水のみちなので、アルベールも確かなことは分からない。

 もっとも、水のみちを使ったことも初めてなのだから……


「頼んだぞ、リノ」


 <ええ、大丈夫。ベルナールさんの気配はもう感じてるから……>


 しばらく経って……


 リノが叫んだ。


 <ここよ!!>

「おぅ!!出るぞ!!」


 バシャッ!!


 アルベールが、飛び出したのは、ベルナールの水浴び用の桶の中だった。

 当然、裸体のベルナールはビックリ。

 背中の中ほどまである銀髪を蜷局上に頭に巻き付け、良く鍛え上げられた身体には古い傷が幾つかあった。

 昔は、ヤンチャしてたという話は嘘ではないようだ。


「ア……アル!?なんで、お前がここにいるんだ!!」


「父上!!俺も戦います。俺の水の精霊は上位確定です。何でも出来ます。

 敵は、王城に潜んでいます。何なら俺が行って、魔族の王の首を取って来ましょうか」


 早口に意気揚々と話すアルベールに、ベルナールは大きく溜息をついた。


「どこから、出て来るんだ?」


「あれ、ここ何処!?」


「前線の野営地だ。お前の精霊は、桶の中にまで道を開くのか?」


「父上のその格好は、水浴びの最中でしたか。俺は、父上の所へ連れて行ってくれと言っただけです。この現状は、水の乙女の趣味でしょう……」


 アルベールの苦し紛れの言い訳に、


「そんなわけあるか!!」


 <そんなわけあるか!!>


 父と莉乃の声がダブルで聞こえてきた。

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