第13話  戦場……

「なんで、俺が後方支援なんだ!?」


 アルベールは、戦場に連れて行ってもらえることが決まると、大はしゃぎで丈夫な導師の服に着替えて一番先頭を歩いてシードックまで移動した。

 ところが、国境まで来て此処で待て、と父のベルナールに言われてしまったのである。


「此処で、傷ついた騎士たちの傷の手当てをせよ」


 と命令されてしまった。


「水の精霊を持つ者の宿命ですわ。兄さま」


「ベルゥ~」


「水の精霊を持つ者は、腕の良い治療師になると言いますものね。」


「それは下位の精霊だろ!!俺の水の乙女は上位だ~!」

「兄さま。父様の言う事は絶体です!」


「リヒトは父上と行ったのに~」


「兄様!!」


 アルベールは、妹のベルベッティーヌに怒られていた。

 ベルベッティーヌは、15歳にしては女らしく、双子の妹のリリエンティーヌと顔が同じでも、より、亡くなった母のアデリーヌに似ていた。


 アデリーヌをこよなく愛していた、父のベルナールはこの双子を溺愛した。

 ベルベッティーヌよりも幾分、活発なリリエンティーヌは神殿に出入りして、何か企んでいるようである。


「うぅ……お前の怒った顔が母上に見えるよ~」


「当たり前です。父様は、危険な戦場に兄様を送りたくなかったのですよ。

 父様に何かあれば、我が家を継ぐのは兄様ですのに!」


「ジルがいるじゃん」


「あの子はまだ、11歳です」


 それでも、激しい戦闘が繰り広げられているのだろう。

 続々と、ケガ人が送られてきた。


 莉乃は見たこともない、大ケガをした人を見て逃げ出したくなったが、契約してる立場なので逃げ出すこともかなわない。


 ケガ人の為の奇麗な水を提供し、

 アルベールは、適当な窪地を見つけ、莉乃に水を喚んでくるように言った。

 莉乃は、やっぱり初めての事だったので、戸惑ったがやはり、


 <う~ん、水よ、来~い!!>


 アルベールの肩から、右手を伸ばして、声を出してみた。


 途端、樹の根元から、コンコンと水が湧き始めた。


「よっしゃー!!グッジョブ!リノ!」


 <私、鼻高くして良いのかな……>


「いいぞ!!俺が許す!!」


 実際、リノは言われたことが全部出来て、良い気分なのだ。


「よし、最後の難関、水の路の魔法をやってみよう」


 アルベールは意気揚々と言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る