第12話  水の魔法

 三日後にシ-ドックの前線に魔法使いたちが移動するというので、アルベールも人数に入れてもらおうと、朝から館の裏の池に行って莉乃の訓練を始めた。


「まず、初めに雨降らしだな。雨を降らせる雲を呼ぶんだ」


 莉乃は空を見上げて、


 <おーい!!雨雲、こ~い!!>


 と、叫んでいる。

 それを見て、アルベールは大爆笑。


 だが、見る見るうちに空は、暗くなってきてポツポツと雨が降ってきた。


 <これで良いのでしょ?>


「ああ……驚いた。じゃあ、この池に今のシードックの情勢を映してみてくれ。」


 <シードックって魔族が占拠したリヒャルト王子の国ね?>


「そうだ。水は、何処にでも繋がるからな。風の噂の情報より水鏡の方が信頼性があるんだ」


 <ふ~ん>


 莉乃は求められるままに、水に手を入れた。

 アルベールが、短い呪文を唱えると、池にシードック帝国の城が映し出された。

 城壁に王族と思しき、リヒャルト王子と面差しのよく似た人物の首が晒されており、

 それを見た莉乃は驚いて、自ら手を引き抜いたが、


「そのまま!!」


 アルベールの言葉に渋々従った。

 アルベールは慎重に敵中を視ているようだった。


「莉乃、今の玉座を見せてくれ」


 <王様の座る椅子の事ね……だったら、王の間ね……少し、アングルを引いた方が分かりやすいかも……あっ!!一番奥に広間があるわ。あそこかも……>


「なんだかんだ言って、お前、精霊になり切ってるぜ」


 <この世界しか、生きる所が無いんですもの……開き直ったの!!>


 莉乃は水と一体化していく自分を感じていた。

 そして、こちらの世界の人には知らない知識もあると感じていた。


 多分、3Dなんて知らないだろうなぁ・・・


「視えた!!玉座には、ディン族の族長だと言われているガーランドだと思われる奴が座ってやがる」


 <ねぇ、街は視なくて良いの!?>


 と、莉乃。


「言っただろ!!魔族は人数が少ないんだ。王宮はその国の権力の象徴ってわけ。街に分散せずに王宮に集まってると思った通りだ」


 アルベールは莉乃の仕事に満足したらしく、


「上出来だ。リノ、ついでに水占をやってみよう!!」


 <何が、知りたいのよ~?>


「俺の未来のお嫁さん」


 莉乃は吐くモノ真似をして、アルベールに叩かれ……るわけなかった。

 アルベールが自分の肩を叩いて痛かっただけだ。


 <アルベールの未来のお嫁さん!!>


 再び、莉乃は水に手を入れて、呟いた。

 水は波紋を描き、波紋が止まると、随分年を取った男が現れた。

 赤ん坊を抱いている。


「!?」


 <!?>


 莉乃にも意味は分からない。


 <お嫁さんの顔を見せてよ~>


 と言うと、アングルが左にそれた。

 そこに、若くて髪の長い女性が現れた。


「嘘だろ!」


 <冗談でしょう~!>


 お嫁さんの顔は、どう見ても莉乃の大人になった顔だった。

 じゃあ、あの年を取った男は……?

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