第11話  ユア・ストーン

 アルベールは昨日の生々しい夢のせいで寝不足気味である。

 精霊が肉体を持って、夢の中に乱入してくるなど////

 聞いたこともない……


 アルベールは、顔を洗って右肩を見た。

 莉乃はまだ寝ているようだ。

 右肩の上で体を丸めて、クークーと眠っていた。


「いいなぁ……精霊は、属性のモンに触れたら生きていけるんだから……

 ほれ!!リノ!!朝飯!!」


 アルベールは顔を洗った、桶の水を自分の右肩に振りかけてやった。


 <う~ん……朝なの……?気持ちいい~~アル、もっと~~>


「自分で行けよ。こんなちっちゃな桶で気分が良くなるなよ。お前は上位の精霊なんだぞ」


 <もう!勝手に上位にしないでよ!>


「後で、莉乃の力を見るからな」


 <分かりました~>


 莉乃は昨日、アルベールが夢の中で、歌ってくれた歌の歌詞が全く分からなかった。

 その代わり、眠った後で夢の中にその映像が出てきて驚いた。

 色白の魔族の乙女が人族の男と出会って、惹かれ合い、そして悲劇的な別れ……

 アフレオスと呼ばれる魔剣と若き英雄王の話……

 見てきたように、目の前に現れたのだ。


 アルベールの歌は大したものだった。きっと、その道でも生きていけるはずだ。


 アルベールはダイニングで食事をとると、父のベルナールがいないことに気が付いた。

 リヒトもいない。

 気になったアルベールは、窓から庭を見た。

 案の定、父とリヒトは一緒にいた。


「父上!!」


 ベルナールは拳大の水晶のような石を持っていた。


「アル、おはよう。」


「あっ!!父上、それが噂のユア・ストーンですか!?」


 ベルナールは微笑みながら頷いた。

 莉乃は惚れ惚れした。

 この親子、美人さんだぁ~~


 <あなたの石?>


「何言ってるんだ?乙女。あれは、ユア・ストーンと呼ばれる魔法アイテムだぞ」


 <私たちの世界の、違う国の言葉を、そのまま訳しただけよ>


 そこにリヒトがやって来て、


「ひょっとしたら、水の乙女と同じ国かもしれないな」


「何がだよ?」


「二年前に異世界に呼び出されて、その子の力を持ち帰ったのがユア・ストーンだ。ユアは、俺を異世界に呼んだ本人の名前だ」


 リヒトがアルベールの右肩を見て、言った。


「見たことのある服装だ」


 これは、リヒトの方が、アルベールよりも莉乃のことが良く見えていることを表していた。


「ひょっとして、日本から来たのかな?」


 莉乃は、契約者以外のアルベールと喋るのは躊躇われたので、うんうんと頷いた。


「行くことが出来るのなら、来ることも出来るな?」


 リヒトはニヤリと笑って言った。


「リノはお前のモンじゃな~い!!」


 アルベールは自分がマル無視されて、会話が進んで行くのにキレた。


「リノって言うのか。アル、ユア・ストーンはもちろんだが、リノはいつか俺がもらう」


「だから、リノもユア・ストーンもやらね~って言ってるだろ!!」


「ユア・ストーンは貴重な召喚石だ。この戦いの鍵になるはずだ。」



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