第10話  夢で逢えたら(2)  

「取り合えず、俺と一緒に魔族と戦うことになるんだけどな」


 アルベールは、右頬に紅葉型の痕をつけて、莉乃に今後を説明した。


「まず今年の年明けにディン族って魔族が大陸を南北に分ける大山脈の麓の国、シードック帝国に攻め込んだ。奴らは、寒い所が好きらしくて、シードックは、棲み処にするには、丁度、良いらしい」


「魔族って?人間とどう違うの?」


 地球世界には間違いなくそんなモノは、ゲームかアニメの中にしか存在しない。


「ディン族は人間に近いんだよ。普通の人間に交じって生きている奴もいるくらいだ。でも、人の精気を吸わなきゃ生きていけない。そして、とんでもなく長生きだ」


「長寿……?」


「ああ……精霊も長生きだぞ……リノはずっとここで生きていくんなら、何人かの人と契約していくことになるだろう……俺は、幸せなのかな……?」


 アルベールは、赤くなって言った。


「リノと最初に契約出来て……」


 アルベールの言葉に莉乃は赤くなった。

 蓮人にコクられた時みたいに、胸が高鳴った。


「変なの、リノ!!赤くなってら!!俺に惚れても無駄だぞ!!精霊と人は結ばれないんだからな。大体、肉体のない精霊がどうして、人と結ばれるんだ~それこそ夢の中だけだろ~」


 アルベールはケラケラと笑っていた。


「別に、アルの事なんか、なんとも思ってないわ」


 莉乃は、少し胸が痛んだ。

 アルベールは、なかなかの美少年だったし、ショートカットの銀髪と銀色の瞳、外見に似合わない口の悪さも気に入っていた。

 まぁ、いわゆる一目惚れである。

 でも、ここで告白するのはそれこそ、種族が違うとか言われてしまう。


「魔族となら、結ばれることもあるけどな」


「魔族と人間が?」


「昔な……ディン族もそれで、絶滅を逃れた魔族の一族だ。」


 莉乃は、聞いてた話とのズレを思い出した。


「若い時代なのでしょう?英雄も、剣聖も、聖人もいないって言われたわよ」


「イリアス・エル・ロイルがここに祀られて、1500年は経つぜ。ああ、西方でイグニスが祀られるようになって、まだ200年くらいか。

 危険な、魔族はいの一番に討伐されたな。そういう、英雄譚なんか、バラッドにもなってるし、いくつか歌おうか?」


 莉乃は、コクンと頷いた。


 アルベールは、夢の中で歌い始めた。

 アルベールにとっては、難しいことではない。子守歌代わりに、聞かされてた、魔法剣士の竜退治の話だったり、魔族の乙女と人族の男の恋物語だったりした。


 3曲目を歌い始めようとして、莉乃が眠っていることに気付いた。

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