第16話  アルベールの危機

 父、ベルナールの懐から、召喚の石、ユア・ストーンを華麗に盗んで、空高く飛んだアルベールは、近くの川に着地した。


「リノ~シードックの王城の水場にみちを開いてくれ。」


 <もう、我儘ね!!良いの!?ベルナールさんや、他の方の意見も聞かなくて?>


「俺は無敵!!リノ。みちを!!」


 莉乃はシードック城の中庭に泉水があるのを見つけ、そこに合わせて、道を開いた。


 <王城の中庭の泉水の場所よ>


「ラ・ジャーー!!」


 アルベールは大声で叫ぶと、川の中へ思い切りダイブした。

 莉乃にはブラジャーと聞こえた。


 ひと時後、王城に着いたアルベールは風のマントの術で隠れながら、王城の奥深くに進んで行った。


 <凄いのね、風のマントは……気配を消してくれるの?>


「だろ?だろ?親方は、上から2つ目の上位の精霊だ。力も強いんだぜ」


 莉乃が風の精霊を褒めると、アルベールはまた図に乗った。

 流石に、莉乃も心配になってきた。この世界のことはまだまだよく分からないが、魔法使いはもっと、落ち着きが必要なのじゃないか!?

 ベルナールさんだって、この戦場では違った顔を見せている。

 アルベールと同じ年だというリヒトに至っては、とても冷静だった。


 アルベールは、水鏡の術で見た王の間への道順を辿り、王の間への扉の前までやって来た。

 扉の前を護るのは、二人の同じ顔をした若い魔族だった。


 二人とも、細身で背は158cmくらいで、青みがかった銀色の髪を肩のあたりでバッサリと切り、濃紺の瞳が人族よりも大きくて、それが無ければ人族では、美形の部類に入る二人だった。


『オルフェ!!誰かいるぞ!!』


『人間の匂いだな!?オルガ!!やれるか!?』


 さすがのアルベールも扉をすり抜けて行くわけにもいかないので、扉を開けたところでアルベールはオルガと呼ばれた少年(?)の方に腕を掴まれてしまった。


 すぅ~と倒れて行くアルベール。

 それを見ていた莉乃は悲鳴をあげた。


『食事をしたのか!?』


『すばしっこそうな奴だったから……暴れる前にちょと……と思たんだけど加減が出来なかった』


『ふん……いいさ。俺にもあとで分け前をくれよ。』


 普通は、アルベールが眠りにつけば、リノは肉体を持ってアルベールの夢の中に入って行けるのである。

 だが今回、莉乃は取り残された。

 よく見ると、アルベールとの絆が細くなっている。

 これは何を表すのだろう……

 莉乃は不安でならない。


 まず、この二人の美しすぎる魔族が怖かった。

 アルベールは微動だに動かない。

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