第42話 旅立ち

「私も、過去のことをとやかく言うつもりはありません。冒険者である以上、死に方を選べるとは思っていません。大事なのはこれからどうするか、です。アヴァロンちゃんを助け出さないと」


 確かに。アヴァロンは俺の恩人だ。俺に力を貸し、戦い方を教え、絶望から救ってくれた。


 今度は俺が、いや、俺たちがアヴァロンを助ける番だ。


 俺はエレナに向かって、力強く頷いた。


「和国に入るのは決定事項のようだな。ならば南のサルデス帝国を経由していくといい。カルネス王国からでは陸路になるうえ、山脈を越えねばならない。大規模水魔法の得意な者がいるなら、南方から海路で行く方法を選んだほうが良いだろう」


 確かに、エレナほどの水魔法の使い手がいれば、天候を心配する必要もない。最悪、海を割って歩いていくことも可能だ。


「船は私の方で手配する。だが一応、エレナ・メルセンヌ救出の事実は伏せておくように。魔界の主と、そんな女に肩入れする者として、アルデバランとメルセンヌはお尋ね者扱いされている。無用な騒ぎを起こさないためだ」


 グランドマスターは味方になると心強いな。


「配慮いただきありがとうございます」


「あぁ、気にするな。お前が溶かした剣は弁償してもらうがな」


「うっ、すみません」


 あれだけの激闘を演じた相手とこうして話しているというのも、なんだか不思議な感覚だ。


「あと、車椅子も買ってくれない? 氷で足を創ることもできるけど、ちゃんと動くのを創ると常時集中しないといけないからさ」


「あぁ、そうだな。俺がこっそり買って……って無理か。グランドマスター、頼めますか?」


 俺が訊くと、グランドマスターは呆れたように笑った。


「俺は使い走りじゃないんだぞ? まぁそれくらい部下に調達させるが」

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