第4話 危ない集金人

 今日もテレビでニュースをやっている。


松田連邦共和国と松本合衆国の間で北海道の自治を巡り、首脳会談が行われました。


松本合衆国は善良な松本による松本のための秩序を目指すという目的の下、世界中から松本の姓を持つ者が集まった国だ。


風変わりなことである。


しかし、風変わりだとか変だとかそういう風には思わない。


今日もいつも通りに進んでいる。


松本合衆国はヨーロッパで大きな影響力を持っていた。


日本は松本合衆国に頭が上がらなかった。


誰もが手軽に国家を設立できるようになった。


そして、日本は多くの国家が一つにまとまった日本連合になった。


日本連合の中央政府は基本的にそれぞれの自治に介入せず、防衛やインフラ整備、医療体制の構築のみに徹するようになった。


それでも今日はいつも通りに進んでいる。


ピンポーン


俺はドアを開けた。


あの女子高生だ。


彼女はとても明るい。


どんなに落ち込んだ時も彼女と話すだけでほんわかと満ち足りた気分になる。


あっ、今、すっげぇ嬉しい気分になっただろ?


おっ、おう


じゃ〜あ、お金ちょ〜だい!


え〜


当たり前


だって、嬉しい気分になったんでしょ?


今、幸せ感じてるだろ?


分かった


では、9999円頂きます


あぁっ!?何て言った!?


じょ〜だん、いつも通り300円で良いよ


んだよ、おどかすなよ


へへっ


彼女はいつものようにイタズラっぽく笑った。


俺はそんないつも通りが大好きだ!


最高だ!



 ある日のことだった。


ピンポーン


俺は最高のいつも通りになる、そう思った。


俺はドアを開けた。


彼女じゃなかった。


全く知らない変なおっさんだった。


おっさんは俺を見るなり、いきなりよく分からない商品を押し付けてきた。


買って!買って下さい!


何ですか?警察呼びますよ!


クビにされる!助けてくれ!買ってくれ!


それはどうにもできない!


買わない!


家族が生きてけないんだ!家族を助けたいんだ!


男はさらに乱暴な口調で迫ってきた。


たとえそうだとしても人の不幸を利用するな!


俺は咄嗟に突き飛ばした。


あああああああああああああああああ


ピンポーン


ガチャッ


だ、大丈夫?


彼女が入ってきた。


幸せ集金人だ!


なぜだ?


こんな状況なのに俺は温かいものを感じてる、いや、幸せすら感じている。


その人から離れて下さい!


あああああああああああああああああ


男は獣のように、そして、涙に包まれた悲しい表情で襲いかかってきた。


俺は激しく蹴りを入れた。


男は恨めしそうに俺を見た。


家族が、俺の家族が、おっ、俺の家族が


彼女はひとこと言った。


自分の身を守るのと他人を傷つけるのは違う


男は我を取り戻し、静かになった。


彼女はそんな彼を抱きしめた。


男は謝って、静かに立ち去っていった。


ありがとう!助かったよ!


俺は礼を渡そうとした。


しかし、彼女は受け取らなかった。


お代とかそういうのは良いよ


でも


だって、今回は君が幸せになったわけじゃないんだし


あの人はこれから誰かを幸せにするために時間を使うようになると思うんだ


それが今回の報酬

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