第5話 ガラパゴス
カランカランカラ~ン!!
「出ました大当たり~!!」
カランカランカラ~ン!!
「えぇ!? 嘘ぉ!?」
なんと一発目で、見事一等の金の玉が出て来た。未だ誰も引き当てられなかった金の玉を、リーサは一発で引き当ててしまった。こんなことが起こるとは。リーサは頭がパニックになっている。
「やった! やったぁ! きゃぁぁぁぁぁ!」
「リーサおめでとう!」
イザナギは宙を激しく浮遊し、一緒に喜んでいる。周りの人々も大きな拍手で祝福してくれている。
「おめでとうございます。こちらが3泊4日南国リゾートペアチケットです。どうぞ」
「ありがとうございます!」
満面の笑みを浮かべながらリーサはチケットを受け取った。まさか本当に手に入れられるなんて。しかも一回目で。嬉しさのあまりチケットを手にすると、リーサはスキップをしながら福引会場を後にする。
「あ、ちょっとお客様! まだ29回残ってますよぉ!」
「もういいの! 後ろの人にあげて下さい!」
振り向きもせず、リーサは大満足で帰って行った。
「せっかくだから残りの29回も引けばよかったのに」
家に着き、くつろいでいたイザナギは不満そうな表情で問う。
「だって私、これが欲しかっただけだから」
リーサは自慢げにチケットをヒラヒラさせて顔を仰いでいる。そんなリーサを見て、改めてイザナギはリーサが好きだなと思った。
出会ってから家族の様に暮らしてきた。リーサはとても子供っぽい性格だが、曲がったことが大嫌いで、とことん真っ直ぐな性格である。福引もそう。自分の欲しいものが手に入れば、後は何もいらない。損得勘定で物事を見ていない。そんな変わらないリーサが、イザナギは嬉しかった。
「ところでリーサ。旅先はどこなの?」
「
「あーあそこか」
「え、なに知ってるの?」
「そりゃ知ってるよ」
「行ったことあるの?」
「無いよ」
「無いんだったら偉そうに言わないでくれる?」
「行ったことは無いけど、造ったから」
「は?」
「西表島」
「頭大丈夫?」
イザナギは爆笑する。
「なに笑ってるのよ」
「言ってなかったっけ? この日本の大陸は、僕が創造したんだよ?」
「……あんたってどうしてそんな大嘘を平気でつくわけ?」
「嘘じゃないもん! この話も、昔リーサに言ったよ?」
「覚えてないし、そもそもそんなの信じるわけないじゃん」
「まぁ信じる信じないはリーサ次第だけどさ」
「あんたね。確かに不思議な能力を持っているのは分かるけど、いくらなんでも日本を造ったってのは盛り過ぎよ」
「本当なんだって! 厳密に言うと二人で造ったんだけど」
「二人? もう一人あんたみたいな得体の知れない奴が存在してるの?」
「まぁ……その話はまたいつかね!」
「何それ? 話しはぐらかしてんじゃないわよ」
「西表島楽しみだな~」
イザナギは期待に胸を膨らませて宙を舞っている。
リーサはもうどうでもよくなったのか、パソコンで西表島のことを調べている。見出しにはこう記されている。
東洋の「ガラパゴス」と呼ばれ、特有の動植物が生息する「西表島」。
なんて惹きつけられるワードだ。ガラパゴス。特有の動植物。いったいなんだと言うのだ。調べずにはいられない。リーサは素早く検索する。
ガラパゴス。長年外来の生物が侵入せず、生物が独自の進化を遂げた「ガラパゴス諸島」が語源。
なるほど。人間に邪魔されずその生態を維持、そして進化しているのか。更に行きたくなってきた。
さて、肝心の宿泊場所はどんなところなのだろう。チケットに記されたURLを打ち込んだ。
旅行の詳細は全てここに記されているようだ。早速宿泊場所をクリックしてみる。
【ホテル・ヘラクレス】
なんとも西表島に合っていない名前が飛び込んできて驚いた。ヘラクレス。何かの間違いだろうか。聞いたことも無い。ホテルの外観や客室の画像をスライドして確認する。
なるほど。やはり合っていないではないか。
全体的にとても高級そうではあるが、ホテルの世界観がどうも島の雰囲気と合っていない。どちらかと言えば中世ヨーロッパをイメージした様な雰囲気だ。
どうしてガラパゴスであるこの島に、人間がガッツリと踏み込むことが出来たのか。全くの謎である。
西表島には他にも宿泊施設が存在しているのは知っている。どれも南国の島に合った施設だったはずだ。当然リーサもそこに行けると思っていた。しかしリーサが行くのはそう。
ホテル・ヘラクレス。
ただならぬ違和感と不安を感じたが、肝心なのはホテルではない。ホテル以外でバカンスを楽しめば良いではないか。そう自身の心に言い聞かせ、パソコンを閉じた。
出発は三日後。
リーサは荷造りを始めた。
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