第3話
すっかり日も暮れて舞踏会も終わり、アリスはベットの上で一人天井を見上げていた。
「あー、もう。あいつむかつくな」
貴族の娘は普通アリスくらいの年齢になると結婚していてもおかしくはなかった。人によっては子供がいることだってありえる。
だと言うのにアリスは未だに婚約者すらいたことがなかった。
その原因は父であるアベルがアリスのことを可愛がりすぎて嫁に出したくないとかいう普通ならありえない理由なのだがアリス自身も前世でのこともあり結婚する気もなかったのでそこは助かっていた。
しかし、貴族社会で16にもなって婚約者が居ないとなると他貴族からも舐められるし、蔑むような視線を向けられることもある。
最近は慣れてきたこともあってなんとも感じなくなってきているが最初はそんな視線にうんざりとしていた。
しかしそんなアリスでも我慢できることとできないことがあった。
今のアリスにとって家族とその家族の大事にしているものは一番大事なものであり、それが馬鹿にされることだけはどうしても許せなかった。
舞踏会に集まった貴族たちにいつも通り冷ややかな視線を向けられたアリスはそれを無視するように歩いていると侯爵家の跡取りが絡んできたのだ。
いつも通り軽く流して会話を終わらそうとするアリスに対して、そんな態度が気に障ったのか父アベルの悪口を言ったのだ。
その場では何も言い返すことなく耐えたのだが一人になった今くらいは愚痴を吐いても罰は当たらないだろうと思いアリスは溜息を吐いた。
「そういえば15の誕生日の日にお父様からもらったペンダントどこにやったけ?」
ベッドの隣にある棚の上に置いておいたはずのペンダントが消えていることに気づいたアリスは部屋の中をくまなく探したがどこにも見つからなかった。
もしかして棚の上に置いておいたというのは勘違いで舞踏会の会場である王城に落としてしまったのではと思ったアリスは会場に戻るために外出用の服に着替えると部屋を出た。
「アリス様?どこかへ行かれるのですか?」
扉を開けると外に待機していたオフィーリアと鉢合わせた。
アリスの専用メイドであるオフィーリアは何かあった時のために睡眠時以外はアリスの部屋の中や前で待機してるのでこうなることはわかっていた。
「お父様からもらったペンダントを王城に落としてきたみたいで取りに行こうかと」
「そうですか。しかしこんな時間に王城には入れないかと」
「ええ、ですから門番の方に伝えておいてもらおうかと。そもそも舞踏会も終わった今王城に勝手に入ることは許されていませんし城の関係者に頼むくらいしかできないですからね」
明日の朝には王都を出る予定で王城に寄る暇なんてないので今行かないとペンダントは見つけられないということをアリスは理解していた。
そうやって事情を伝えるとオフィーリアは少し考えたようなそぶりを見せながら『代わりに自分が行く』と言ってきた。
さすがに自分のミスを他人に任せっぱなしにするのは気が引けるので自分も行くと粘っているとオフィーリアのほうが先に折れてくれたようで一緒に行くこととなった。
深夜にもなるとどこの店も閉まっておりあたりは真っ暗だった。
静かすぎて不気味に感じていたアリスだったが雲一つない星空を見て落ち着いた気持ちになった。
「アリス様、王城につきましたので私は門番の方に話を通してきます」
そういって門番のほうへと向かうオフィーリアを見送って空を見上げていると、ふいに何者かに口を覆われた。
抵抗を試みたアリスだったが睡眠剤を吸わされたらしく意識はそこで途切れた。
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