第12話 常識はずれな計画。
「さて、本日皆さんにお集まりいただいた理由をお話ししなければなりません。」
王妃が立ち上がり、お茶会に集まった女性達を見渡しながら口を開くと、庭園は一気に静寂と緊張感に包まれた。
この国の今後、つまり自分達の将来に関わる重要なことである。
皆、姿勢を正し、王妃の次の言葉を待った。
「残念なことですが、皆さんが知っての通り、わが国は負債を抱えました。借金は膨大であり、それは一朝一夕に返済出来るものではありません。既存の収支計画では期限である一年以内に返済することは不可能であり、今から新しい財源を生み出すことは、非常に困難なことだと思われます。」
現状を説明する王妃の言葉に、参加者は苦悶の表情を浮かべた。
一方、借金に一年という期限があることを初めて知ったアイリスは、改めて結果を早く出さねばと決意を新たにしていた。
一年っていうのは、隣国の長女の花嫁修行がちょうど終わる頃ですもんね。
どうせ借金を返せないと見越して、返済期限が切れるのと同時に、ルカリオの元へ嫁がせる気に決まってます。
気持ち悪いほど準備万端の計画ですよね。
そんなことさせませんよ!!
「このままではこの国は隣国の言いなりになり、属国となってしまうでしょう。」
悲しそうに告げる王妃に、「そんな!」「なんとかなりませんこと?」と言った声が回りから上がる。
属国になるなんて、到底受け入れられることではない。
「しかし!」
凜とした王妃の口調に、皆が口を閉じ、注目した。
「一つ、この状況を打破出来るかもしれない計画があります。それはとても突拍子もなく、常識はずれの計画です。」
ズコッ。
アイリスはシリアスな空気の中、一人ずっこけていた。
マリーママ、あんな簡単に賛成してくれたと思ったら、静かにそんなこと思ってたのですね!
確かにこの世界では非常識でしょうけれど!!
しかも両隣から、ダリアとアスターの何か言いたげな視線を感じます。
二人とも、絶対私が関わってると怪しんでますね?
まあ、実際その通りなんですけど・・・
しれーっと二人の視線をかわしている間にも、王妃の話は熱を帯びていく。
「私はその奇抜な計画に、全てを賭ける決心を致しました。そしてその計画は、ここに集まる私達女性の力に懸かっているのです。今日ここに集う私達は、お互いに協力し、知恵を出し合い、この国難を共に乗りきろうではありませんか!」
庭園に響く、王妃の力強い声。
一瞬の沈黙の後、王宮すら包み込むほどの大きな歓声と、拍手が沸き起こった。
「さすが、王妃様。素晴らしいですわ!」
「感動致しました!」
「私、精一杯協力させていただきますわ!」
涙を拭いながら立ち上がり、王妃を讃える人々。
さすがマリーママ。
心を掴むのが上手いですね。
まだ全然内容も聞いていないのに、皆さん協力する気満々じゃないですか。
あらあら、イタズラが成功したような顔でこっちを見ないで下さい。
アイリスは思わず苦笑してしまった。
物凄い援護をもらい、ありがたいやら、やりにくいやら。
「では、計画の発案者、アイリス嬢に代わりましょう。アイリスちゃん、よろしくね。」
あっさりとその場を譲り、王妃が席に座った。
マリーママったら、敢えて『アイリスちゃん』と親しげに私の名を呼んで、自分が後見していることを強調してくれたんですね。
ここまでお膳立てしてくれて、ありがとうございます。
感謝していたアイリスだったが。
「ほらね、絶対アイリスだと思ったわ。」
「奇抜と言ったらアイリスですもの。」
ダリアとアスターの砕けた会話が始まり、
「アイリス様なら、さぞ目新しい計画を打ち出してくれるでしょうね。」
「アイリスちゃんは昔から変わったことを思い付く子だったからねぇ。遠くから顔を出した甲斐があったわ。なんだか久々にワクワクしてきたねぇ。」
王妃の力強い演説があった為、比較的非難が少なくて済むかもと考えていたアイリスだったが、予想外の歓迎ムードに正直戸惑ってしまう。
あれ?
なんだか計画を聞く前からみんなやたら好意的じゃないですか?
そんな期待に満ちた顔を向けられるとは、想像していませんでしたよ。
っていうか、もしかして私ってば、一部分の方だけでなく、皆さんに変わり者だと認識されていたのですか?
ガーン・・・と呟きながら、アイリスはトボトボと皆の前へ歩を進めたのであった。
国の借金がすごいので、王子、騎士団長の息子、宮廷魔術師団長の息子でアイドルグループ結成します!え?恋愛は禁止ですけど!? 櫻野 くるみ @kurumisakurano
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