第7話 国歌プロジェクト始動。

デビュー曲が国歌に決まったとはいえ、やることはまだまだ山積みである。


振り付けや衣装だけでなく、今後のプロモーションやファンクラブについても考えなければならない。

なにしろ早く結果を出し、お金を稼がなければならないのだから悠長にはしていられない。


アイリスは再び王妃の部屋へ向かっていた。

「チェスターズ」が国家プロジェクトである以上、アイリスが個人で出来ることなど限られている。


やっぱり、芸能事務所的な組織が必要ですよね。

「チェスターズ事務所」を作りましょう!

なんだか有名なアイドル事務所を彷彿とさせますね。

社長はやっぱりマリーママにお願いしましょう。

影響力が桁違いですからね。


コンコココン


「どうぞー。」


いつものノックをし、部屋に入る。

今日は国王と、宰相でアイリスの父であるウォルターにも集まってもらっていた。


「昨日ぶりね、アイリスちゃん。その顔は、アイドル計画が順調に進んでるってことかしら?」


「アイリスちゃん、君にまで迷惑をかけて本当に申し訳ない。私がふがいないばかりに・・・」


アイリスが挨拶する前に国王が膝をついて謝ろうとするので、慌てて止める。


「アランパパ、止めて下さい。迷惑なんてかかってません。私、むしろ楽しいです!!」


いや、この状況を楽しがるのもどうかと・・・と父が止めるのも聞かず、アイリスは続ける。


「私の目に狂いはありませんでした。あの三人はスターの原石だったのです!!さすが私です!!」


顔を紅潮させて、またもや自画自賛を始めたアイリスに、ポカンと固まる国王と宰相。

慣れっこなのか、王妃だけが楽しげに笑いだした。


「ホホホ、それは何よりね。私達も協力は惜しまないわ。さぁ、今後について話し合いましょう。」


王妃の言葉で皆がソファに座り、とりあえず現状についてアイリスが報告をした。


「昨日、アイドルグループを結成することにルカリオ、キース、レンが納得してくれたので、『チェスターズ』という名前のアイドルグループを組みました。リーダーはルカリオです。」


「あら、分かりやすくていい名前ね。」


「アイリス、私にはアイドルグループというものがまだわかっていない上、どこから収入を得ようとしているのかが全く理解できないのだが・・・。」


「情けないが私もだ。アイリスちゃん、そこから説明をお願いしたい。」


宰相と国王の疑問に、アイリスが答える。


「簡単に説明すると、『チェスターズ』がデビューして世に出ると、若い令嬢、ご婦人のみならず、庶民の方々、お子様、男性の中にもファンになる人が出てきます。イベントで入場料を設定したり、グッズを販売するのはもちろん、ファンクラブを作って入会費を徴収したり、本を出したり・・・」


「グッズとは?」


「三人にちなんだ雑貨類のことです。音源の入った水晶、写真、応援に使うペンライト、タオルなど色々あります。三人のメンバーカラーを決めたのですが、例えばルカリオの赤を例に説明しますね。赤いチーフをルカリオが衣装で身に付けるとします。『ルカリオのチーフ』というグッズを作ると、ルカリオファンがグッズのチーフを購入してくれるという訳です。」


「なるほど、しかしそんな国家予算ほどの金が動くとは思えないのだが。」


「それはまず、こちらをご覧になって下さい。」


半信半疑の父の前に、国歌を歌う三人が映っている水晶を取り出す。


「この映像を見ていただくと、少しはおわかりいただけるはずです。」


アイリスは自信ありげに微笑んだ。

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