第6話 チェスターズ結成!デビュー曲は国歌です!!

王宮からの帰り道、達成感に包まれながらアイリスは一人で馬車に揺られていた。


今日はよく働きました。


王妃様のマリーママとお話して、アイドルグループ結成の許可をもらって、三人にも納得してもらえました。

王子のルカリオがリーダーに決定したし、みんなのキャラクターとメンバーカラーまで決め終わりました。

こんなに順調でいいのでしょうか。


明日もまたルカリオの部屋で集まる約束ですし、デビュー曲も考えなくてはいけません。

ああ、晴れ舞台が待ち遠しい。

きっとキラキラのアイドルがそこに!


鼻歌でも歌い出しそうになったその時、アイリスはようやく気付いた。


グループ名、決めるの忘れてました!!


なんてこと!

グループ名は命とも言えるものではないですか!!

私のバカバカ。


明日はとにかくグループ名から決めることにしましょう。



と、帰り道では大いに反省していたのだけれど・・・。


寝る前にベッドの中で冷静になって考えてみた。

ここはチェスター王国。

つまり・・・


『チェスターズ』でよくない?


だって、チェスターの王子様と、騎士と、魔術師ですよ?

他の候補すら思い浮かびません。


明日、三人の意見を聞きましょう。

おやすみなさい。


アイリスは反省していたことも忘れ、あっさりと眠りについた。



◆◆◆



明くる日、再びルカリオの部屋。


「ごめんなさい。昨日、何より大切なグループ名を決めるのを忘れてしまいました。何かいい名前はありますか?ちなみに私の候補は『チェスターズ』です。」


「うん、いいと思うよ。」


「いいんじゃね?」


「賛成です。」


まあ、なんと雑なお返事!

そんな適当でいいのですか?

あなた達の未来を左右する名前ですよ?


自分も昨日は忘れてた上、眠る前の一瞬の閃きで思い付いたのを棚に上げ、アイリスは腹を立てていた。

不満が顔に出ていたのだろう。


「いや、真面目に考えていない訳ではなくて、国の借金を返す為のグループだから、一番しっくりくると思ったんだよ。愛国心に繋がるとありがたいしね。」


ルカリオってばいいこと言いますね。

愛国心!芽生えそうです。

しかも、周りの国に売り出すことになった時にも有効な名前だと思います。


「私ってばさりげなく、最高の名前を考えていたんですね。さすが私です!!」


急に自画自賛し、胸を張るアイリスに呆れながらも、三人が「すごいすごい」「偉いぞ」と言って頭を撫で始めた。

紅一点のアイリスに、彼らはとても甘いのだ。


アイリスは、こういう自分だけしか知らない三人の良さを、もっともっと世の中に知らしめたいと更に意気込んだのだった。



「では、いよいよ本格的にデビューに向けて、動き始めたいと思います。突然ですが、三人とも歌はどんな感じですか?」


「どんな感じって・・・ザックリしてんなー。」


だって、上手ですか?って尋ねにくいじゃないですか。


「そんなこと言うならキース、あなたから歌ってみて下さいよ。んーと、国歌でいいです。」


最初文句を言っていたキースだったが、結局は折れて歌い出す。


♪~♪~


「うわぁ。キース、上手です!意外です!!」


「うるせーな。意外は余計だっつーの。」


照れて口が悪くなっているが、キースの歌声は声量豊かでたくましく、低温が響き渡る伸びやかなものだった。


これはいけます!


「次はルカリオね。その後レンに歌ってもらいます。」


果たして二人の歌声は・・・


合格です!!

某テレビ局の、のど自慢の鐘の音が鳴り響くのが聴こえました。


ルカリオは、しっかりとした音程に、お手本のような歌い方なのに甘い声。

色っぽくも聴こえ、思わず聞き惚れちゃいます。


一番びっくりしたのがレンの歌声でした。

細い声なのに高音がとても美しく、女性が歌ってるのかと思うほどです。

自信なさげに歌ってましたが、勿体ないです!


「三人で一斉に歌ってみてもらえますか?」


♪~♪~


「素晴らしいです!もうデビュー曲は国歌でいっちゃいましょうか?」


「っていうか、俺、国歌以外の歌なんて知らねーぞ?」


キースに言われ、またまたそんなーと思いながらも考えてみる。


あら?この国の歌って、子守唄と童謡しかないのでは!?

デビュー曲が子守唄って斬新ですね!

童謡だとまるで、歌のお兄さんです!


・・・


国歌一択でした!!


セカンドシングル、どうしましょう?

すぐさま王家御抱えの詩人、作曲家にお願いする算段を立てるアイリスであった。

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