第5話 私はもちろん、箱推しです!

「リーダーの選出に続いて、次はそれぞれのキャラクターとメンバーカラーを設定したいと思います。」


「キャラクター?そんなの必要なのか?」


キースが不思議そうに訊いてきた。


確かに、この三人はすでにキャラクターがしっかり確立されてますからね。

一応の確認というやつなのです。


「アイドルにはファンが付きます。グループごとまるっと応援してくれることを『箱推し』と言います。今回だと、グループごと、三人ともまとめて応援するわ!っていう意味です。」


彼らがフンフンと相槌を打ってくれる。


「一方、特定のメンバーが好きで、応援してくれる人も出てきます。推しているメンバーの略、『推しメン』。例えば、『あなたの推しメンは誰ですか?』『私の推しメンはルカリオです』。みたいな感じに。」


「なるほど。」


ルカリオは納得してくれたみたいだけど、キースとレンが面白くなさそうな顔をしている。

あくまで例えですからね?


「さらに縮めて、好きなアイドルは『推し』と呼ばれることが多いです。」


深く語れば本当はもっと色々あったり、諸説あるかもしれないですけど、今回はサラッと説明しておくことにします。


私的には本当は『自担』を使いたかったですけど、広く勧めてもらう為にも『推し』でいきましょう!


「ちょっと待って下さいね。初心者には難しいですね。つまり、僕達それぞれを応援して『推し』にしてくれるファンが出てくるということですか?」


「さすが、レンです!そう、皆好みの顔や性格の人を自分の『推し』に選ぶのです。その時にキャラクターがそれぞれハッキリしていると、被らずに選びやすいし、グループ内での立ち位置や役割がわかりやすい訳です。」


「なるほど。でも僕達は元々結構バラバラじゃないかな?」


「ルカリオの言う通り、ルカリオ、キース、レンは見た目も、話し方も、得意なことも、なにしろ職業が別々ですからね。とても理想的ですよね。」


ルカリオは王子なだけあって、短いキラキラした金髪に、笑顔が似合う端正な男前。

物腰も柔らかいし、サービス精神があって王道、正統派のアイドルって感じだ。


キースは騎士団に属してるから、体格が良く、赤毛の短髪にワイルドな顔付き。

口が悪く、パッと見怖いのに、実は包容力があって優しいところがギャップ受けしそうである。


レンは少し長い黒髪で、いつも魔術師のフードを被っているが、色白のとても綺麗な顔をしている。

線が細く、誰にでも敬語を使い、物静かで知的なイメージで、ミステリアス好きな根強いファンが付きそうだ。


まぁ、なんてアイドル向きな三人組なのかしら!!

完璧です!!


アイリスが考えるそれぞれのキャラクター像、簡単に言えば、『正統派』、『ワイルド』、『ミステリアス』を語ると、賛成してくれたので、そのままのイメージでいくことにする。

人間、キャラを偽装せず、無理をしないのが一番である。



「で、気になったんだけど。」


ルカリオがイタズラを思い付いたような顔をしている。


「さっきの例えは置いておいて、アイリスの『推し』は僕達の誰なのかな?」


は?

私の推しを気にしてどうするのでしょう。


「私は『箱推し』ですから。」


ニッコリ笑って言ったら、三人に不満そうな顔をされてしまいました。

なにゆえ?

一番公平な答えです。



「次いきますよ。メンバーカラーですが、希望はありますか?一般的なのは、赤、青、黄色、緑とかですかね。」


「黒がいいです!」


おっ、レンにしては珍しく積極的ですね。


「いいですよ。レンは黒にしましょう。ルカリオとキースは?出来れば赤は欲しいですけど。」


「ルカリオが赤じゃねえか?絨毯とか襷みたいなやつ、赤だし。俺は青だな。」


「少し意味不明だけど、文句は無いよ。じゃあ僕が赤だね。でもそもそも何に使う色なんだい?」


「あら、説明を忘れてました。衣装に取り入れたり、グッズの色にしたり。あとファンは推しの色を身に付けて応援するのですよ。あ、私は3色身に付けますので、ご心配なく!!」


先手を打ってやりましたよ。

赤、青、黒の3色全部はなかなか配色が難しそうですが、なんとかしましょう。

五人組とかじゃなくて良かったです。


チェッという舌打ちが誰かから聴こえた気がしますが、スルーしました。



とにもかくにも、キャラクターとメンバーカラーの決定です。



その時のアイリスは、肝心のグループ名を決めるのを忘れていることに、まだ気付いていなかった。

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