第3話 主役の登場。

アイリスは王妃に続いて、ルカリオ王子の部屋を訪れた。

ルカリオはチェスター王国の王太子である。

この国の次期国王として日々学び、公務をこなしている。


コンコココンコン コンコン


ルカリオ用のノックをする。


「ん?アイリス?入っていいよ。」


すぐにアイリスと気付き、入室を許可してくれるルカリオ。

扉を開けると、騎士団長息子のキースと、魔術師団長息子のレンも集まっていた。


「あら?二人も来てたのですね。」


「おう、借金の話を聞いちまったからな。そういうアイリスもルカリオを心配して来たんだろ?」


「この国始まって以来の危機ですから、心配にもなりますよね。」


キースとレンがアイリスに話しかける。


キースはキースの父と同じ騎士団に所属し、もっか一人前の騎士になる為に日々奮闘している。


レンもレンの父が団長を務めている宮廷魔術師の一員だが、魔術の実力が子供の時から群を抜いていた為、今では立派な魔術師として働いている。



「うーん、心配もしてるけど、それより借金返済計画の実現に向けてって感じですかね。」


「「「は?」」」


三人の声がハモった。


「借金返済計画って何ですか!そんなものがあるんですか!?」


「アイリス、もしかして君の前世の記憶でどうにかしようとか考えていないかい?」


「うわ、それは嫌な予感しかしねーな。」


レン、ルカリオ、キースが口々に言う。


キースったら失礼ですね。

でもさすが長い付き合い、理解が早くて助かります。


「王妃様には先に許可をいただいちゃいました。私の計画が嫌だったら三人とも結婚ですって。」


「はあ?ルカリオだけじゃなく、レンと俺も結婚するのか?」


「はい。ルカリオ大好きなお姫様の妹、次女と三女の姫はキースとレンがいいのですって。」


「全然良くないですよ!僕はその三女と結婚なんてしたくないです。」


「俺だって次女の姫なんてごめんだぜ。」


「いやいや、僕も長女と結婚なんてしないからね?」


三人ともお姫様との結婚が嫌らしい。

三人で三姉妹と結婚したら、みんな義理の兄弟になるのねーなんて呑気に考えてしまった。



「三人ともモテるのに、婚約者すらいませんものね。」


『『『誰のせいだと!!』』』


三人が心の中で訴えたが、悲しいことにアイリスには全く届いていなかった。



「それで?アイリスの計画ってどんな内容なのかな?」


ルカリオが心配そうに尋ねてきた。

そんなに不安になることなんてないのに。


「それはー・・・ジャジャーン、アイドルグループ結成なのです!!」


「「「はぁぁぁぁぁぁあ??」」」


「だからー、歌って踊れるイケメンアイドルにあなた方三人がなって、国中の、ううん、世界中の女性をメロメロにして、お金を巻き上げ、じゃなかった、貢がせ・・・でもないや、愛と勇気をお届けするのです!!」


あれ?皆の反応が薄い上、視線がなんだか痛いです。


「そんな庶民の芸人のようなことを僕達にやれと?」


「それはー、『親しみやすい王族と身近な貴族社会』がコンセプトなので。」


「歌うって何をだ?踊るのは夜会のダンスか?」


「いえ、もっとポップな専用の歌とダンスを用意します。」


「そんな未経験のこと出来ません。」


「誰でも最初は未経験です。」


アイリスはルカリオ、キース、レンにそれぞれ適当な返事をしていたが、だんだん彼らの煮え切らない態度にイライラしていた。


「もう!文句を言うなら、結婚するしかないですね!」


「それはちょっと待ってくれ。しかし、あの母上が許可をしたならやらざるを得ないんだろうな。」


「そうだな、あの人を怒らせたら国が滅ぶのと同じ結果だからな。」


「他に選択肢はなさそうですね。」


よし!みんな納得してくれました!!

最初からそうしてくれたら楽なのですけどね。


「でも、僕達もご褒美くらいないと、歌って踊るモチベーションがね。」


ん?

ルカリオが何か妙なことを言い出しましたよ。


「確かに、俺らだけが体を張るっつーのもな。」


「アイリスにも一肌脱いでもらいましょうか。」


え?私??

私に何をしろというのですか?


「僕達が無事に借金を返済出来たら、僕、キース、レンに1つずつご褒美を貰えるかな?」


「ご褒美?私に出来ることならいいですよ。」


『国の為に大変な思いをさせるんだから、私もそれくらいはね』と思い、ルカリオに答えた。


「よっしゃ、約束だからな?後でそれは無理は無しだぞ?」


「アイリスにしか出来ないことですからね。僕も俄然やる気が出てきましたよ。」


ちょっと待って。

あなた達、私に何をさせる気なのですか?

急に不安になってきましたよ。


「では、アイドルグループとやらについて、具体的に話そうか。」


ルカリオが、何故か色っぽい視線をアイリスに向けながら提案する。


「そうですね。えっと、まずは・・・」


返事をしながら、『私、早まったかしら?』と、アイリスは既に後悔をし始めていた。

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