第2話 そうだ、アイドルグループ結成しよう。
アイリスはこの国、チェスター王国の宰相の一人娘である。
小さい頃から父親に連れられ、王宮に遊びに行くことが多かった為、王子のルカリオ、騎士団長息子のキース、宮廷魔術師団長息子のレンとは幼馴染みの関係だ。
アイリスは3人より1つ年下なのだが、いつも3人と一緒に遊んでいた。
アイリスには隠している訳ではないが、秘密がある。
生まれつき前世の記憶、つまり日本での記憶を持っているのだ。
両親と幼馴染み達、国王夫婦には伝えてある。
日本の記憶があったからといって、特に今までその知識を役立てることもなかった。
なぜならこの世界には魔法が存在する為、あまり必要性がなかったのである。
まあ、時々すっとんきょうなことを言っては、皆に変な目で見られていたのだが・・・
しかし今回は、アイドルオタクだった前世の記憶が生かせるチャンスだと、アイリスは燃えていた。
ふふふ。
アイドルの概念がないこの世界で、初のアイドルグループを私が作っちゃいましょう!
なんせルカリオ、キース、レンはとってもイケメンなんだもの。
目指せ、一攫千金です!!
という訳で。
王妃様とアポが取れたので、王宮へ出発でーす。
まずは王妃様に許可を貰わないとね。
王妃様と私は、昔から実の母子のように仲が良く、しょっちゅうお茶会をしている。
今日も王宮の前で馬車を降り、入り口に近付くと、警護している兵士が顔パスで通してくれた。
勝手知ったるなんとやら、通い過ぎてお城なのに緊張もしない。
コンコココン
私と王妃様専用のノックの合図である。
すぐに中から声がかかった。
「アイリスちゃん、どうぞ入ってー。」
「マリー様、ごきげんよう。」
丁寧にお辞儀をしてみせると、不機嫌な顔をされた。
「あら、嫌がらせのつもり?いつも通りに呼んでくれないのかしら?」
「えへへ。冗談ですよ、マリーママ。お邪魔しまーす。」
さすがに人目がある時はキチンと振る舞うが、私と王妃様は二人きりだといつもこんな感じである。
王妃様はママ呼び、国王様はパパ呼び。
ちなみに国王様はアランパパと呼んでいるのだが、こんなに親しく出来るのも、夫妻には息子のルカリオしか子供がおらず、女の子のアイリスが珍しいからだろう。
「で、アイリスちゃん、今日はもしかしてあのおバカさんがやらかしたことに関してかしら?」
さすがマリーママ、話が早い。
国王であるアランパパをおバカさん呼ばわり出来るのは、しっかり者の奥様のマリーママだけです。
「お父様から、この国が多額な借金を抱えてしまったと聞きました。」
「そうなのよ。到底返せない金額ね。あちらの国は長女の姫を、うちのルカリオの妻にすれば借金を帳消しにするって言ってるの。でもそうやって嫁入りさせて、この国を牛耳るつもりでしょうね。」
「あちらの姫って、以前からルカリオに好意を持ってましたよね?」
「もはや、ストーカーね。次女と三女がそれぞれキースとレンを狙っているのも有名だし、あわよくばこの機会に二人も手にいれようとしてると思うわ。」
私の大切な幼馴染み達をお金で手にいれようだなんて!
そんなの許せません!!
「マリーママ、私、ちょっとした計画を立てたんですけど、聞いてもらえます?」
「まあ、アイリスちゃんの計画じゃ、さぞ斬新でしょうね。」
ふふっと笑うと、私はアイドルグループ計画について説明を始めた。
「それで、アイドルって言うのは、格好良くて、歌って踊れる人達なんです。」
「歌って踊る?あの子達が??」
言ってるそばからマリーママが笑いだした。
「フフフ・・・アハハハハハ!想像しただけで面白いわ、アイリスちゃん。そのアイドル?ぜひやってみてちょうだい。」
え?まだ説明はこれからなのですが・・・
こんな早くにゴーサインが??
「本人達は絶対嫌がると思いますけど・・・」
「あら、『嫌なら結婚する?』って言うから平気よ。あの子達、結婚って言われたら何がなんでも稼いで、借金を返すと思うわ。」
あらら、そんなにあのお姫様達が嫌なのですね。
でもマリーママの許可さえあれば、結構無茶も出来ちゃいます。
「マリーママ、衣装係とか、作曲家、魔術師さん達にも手伝ってもらってもいいですか?」
「もちろん。借金のことは位の高い者達は知らされているの。国を乗っ取られるくらいならいくらでも協力してくれるわ。私からもアイリスちゃんを手伝うように言っておくから。」
言質は取りましたよ!
これであとは本人達だけです。
肝心の3人、ルカリオ、キース、レンだけが何も知らされないまま、計画は進んでいくのであった。
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