坂道

 初めての野外での放尿、そして道行く人々の目の前で失禁を経験してからしばらく経った。海美は普段通りの生活を過ごしていた。昼前に目覚め、寝起きの排尿を済まし、30分遅れで2限の授業に向かう。昼は最近仲良くなった同じサークルの同期の男の子・タクミと過ごしていた。声優の中村悠一にそっくりで決してスタイルがいいとは言えなかったが、一浪しているということもあり、その妙に大人びた雰囲気や面倒見の良さに海美は次第に惹かれていった。輝かしい彼との日々が働いてか、海美の放尿と失禁の記憶は薄れていった。

 はずだった。 

 久しぶりにサークルの飲み会があった。居酒屋で現地集合だったためタクミと2人で現地に向かった。調子のいいメガネのうるさいだけの男子・田島が「おっと〜!新郎新婦のご入場だー!」とからかってきたが悪い気はしなかった。

 人数が揃い、飲み会が始まる。海美はコーラを頼んでいたが、タクミが持つビールが飲みたくなり一口だけ呑み込んだ。この世の終わりのような苦味とえぐみを感じた。コーラを一気飲みしてビールの風味を掻き消した。

「ちょっとトイレ行ってくるから」

 トイレに立とうとするタクミだったが、彼と離れたくなかった海美は彼の手を掴んで

 「私も」。自分の尿意に嘘をついた。

 この店のトイレは男女に分かれているが、男子トイレの小便器は通路からついたて一枚のみで外から丸見えだった。女子トイレはその横にあった。つまり、女子トイレの空席待ちをする女子たちは自然と放尿中の男子の後ろ姿を見る羽目になる。そのときの海美も例外ではなかった。

 タクミがズボンのチャックを開ける音、タクミの放尿音、そしてその尿の道筋。海美はその全てを捉えてしまった。大好きな彼の無防備な後ろ姿と尿に形容し難い興奮を覚えた。

 「先戻ってるね」

 用を足したタクミが海美を置いて飲みの席に吸い込まれていった。私はタクミのおしっこを見てしまったのに、あなたは見てくれないのね。待ってくれないのね。罪悪感と怒りが同時に襲ってきた。モヤモヤした気持ちを優しく抱きしめていると、自分のトイレの番が回ってきた。と同時に、後ろに明らかに限界そうな女の子が並んだ。他のサークルの女だろう。そういえば入学行事で見た気がする。

 「どうぞ」

 海美は はち切れそうな貯水タンクを抱えた女にトイレを譲り、自分は用を足すこともなく席に戻った。


 「おしっこ出たー?」

 すっかり顔を真っ赤にしたタクミがビール瓶を抱き抱えてニコニコしながら話しかけてきた。どうやらこの数分で正気を失ってしまったようだ。

 「うん」

嘘をついた。おしっこなんて出てない。しばらくするとタクミは海美の膝の上で眠りに落ちた。海美はタクミが飲み残したビールを一気に飲み干してしまった。祖母の教え「食べ物は粗末にしない」、その教えに従ったまでだが、苦いものは苦い。コーラでお口直しに走ったが、炭酸が抜けたコーラは口の中の苦味を加速させた。


 飲み会が解散になった。眠りの王子を叩き起こす。20歳児の赤ん坊を担いで外に出ると先輩たちが手を貸してくれた。

 「こいつん家近いから後は任しとき!」

お言葉に甘えてしまった。

 ビール苦かったなぁ。あれを美味しいと言える日が来るのだろうか。

 そんなことを考えながら歩いていると知らないうちに自宅前の交差点に辿り着いていた。そう、ここは少し前に海美が大きな水溜まりを作ってしまった場所。あのときの失敗が脳裏をよぎった。さっきまで無口だった尿意が途端に自己主張を始めた。だが、同じ轍は踏まない。信号が変わるまで耐え忍んだ。

 信号を渡り、小さな公園が見えてきた。公園を通り過ぎ、坂を下ると自宅だ。

 そうだ。ここでしよう。

 前回なし得なかった野外での意図的な放尿をこの坂で。

 あたりを見渡し、誰もいないことを確認した海美は黒いスキニーと下着を膝まで下ろし、その場にしゃがんだ。

 プシャァー ショォオオ チョロチョロ

 海美の秘部から解き放たれた液体は坂を転がり落ち、排水溝に飲まれていった。

 「はぁ」

 安堵と快楽で声が漏れた。目の前に阿弥陀籤のように広がる自身の尿と、それに至るまでに臀部に分岐した尿を感じながらエクスタシーを感じた。外で放尿することの気持ち良さ、この快楽に酔いしれた。

 絶頂に達している中、自分の下半身を光が照らすのを感じた。前を見るとライトを煌々と輝かせた車が下半身を露わにした海美の横を通ろうとしていた。慌てた海美は下着とスキニーを履き、何食わぬ顔で自宅へと向かった。臀部を伝った尿が下着を濡らしていくのを感じながら。

 


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野外活動 @umichan_pee

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