失意

 尿意を抱えたまま居酒屋を飛び出した海美は先輩たちと別れ、1人歩いた。先程の放尿で濡れた下半身がまだ乾いていない。

 「私やばいことしちゃったかも」

 果てしのない羞恥心と罪悪感が海美を襲った。と同時に一種の快楽のようなものも感じた。本来すべきではない場所で放尿する行為、この行為がここまで開放的だったとは。

 そうこうしているうちに家の前の大通りの交差点に差し掛かった。信号はまだ赤になったばかりのようだ。この先に行けば小さな公園が見え、海美のアパートが姿を表す。道行く車を目で追いながらどこで放尿してやろうかと海美の脳はフル回転した・・・のだが。

 長い。変わらない。信号がなかなか変わってくれない。この信号は一度変わってしまうとなかなか変わってくれない。信号を待っているようでは埒があかない。時間だけが無常に過ぎていった。

 車道を走る車たちが止まるのが見えた。そして目の前の信号が青に変わる。やっと動ける・・・と安堵した。その時だった。不意に海美は下半身が温かくなるのを感じた。

 「えっ?」

 ジョバジョバジョバ

 ピチャピチャ

 大勢の人が行き交う横断歩道の手前で海美はおもらしをしてしまった。太ももを駆ける液体はアスファルトに当たり大きな音を立てた。後悔と羞恥に襲われた海美は青信号の横断歩道を駆け抜け、自宅へとたどり着いた。

 スニーカーの底に溜まった尿を流し、黄色く染まった下着とショートパンツを洗濯機に投げ入れ、海美は下半身を露わにしたままベッドに倒れ込んだ。耐え難い屈辱に襲われた。

 「次こそは」

 臥薪嘗胆。次こそは"大義"を果たしてやろう。強い決意が海美の中で芽生えた。

 

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