第27話 再会、そして

 やっぱりだ。この前病院で見た通りのツーブロック。とてもよく似合っているのに、なぜだろう、正美がなにかを捨ててしまった予感にさいなまれる。


 おれが澄子に記憶を操作された時、なぜおれにわかれの言葉を告げたんだ? なぜおれでは正美を助けられないんだ? なぜ?


「ざーんねん、だねぇ。牛丸さん、あなたは自分の正義の中に正美さんを閉じ込めようとした。その結果、彼女は澄子さんに助けを求め出会い、そして怪異なるものを退治することで気持ちを解放させるまでに追い詰めてしまっていた。そうなったのは全部、あなたのせいなのですよ? 牛丸さん」


 そんなこと――。ないとは言い切れない。おれは、自分の正義感をいつだって正美に押し付けていたのかもしれない。それは、精神的に彼女を虐待したのもおなじことだ。


 おれのせいで、正美を追い詰めてしまったのか?


「和彦、あたしずっとあなたの差し出がましい言葉の暴力の被害者だったよ。正論は時に人を傷つける。だから、今度こそちゃんとさよならしよう。ばいばい、和彦。あんた、本当にバカだよ」


 正美の言葉を最後とばかりに、自称陰陽師の優男が手のひらをギュッと握りしめる。同時に強い頭痛に襲われた。脳波を握り詰めているのか!?


 糸の切れた人形のようにその場でくずおれる視界の端々に、同様に倒れている若林、泉の姿が見えた。


「弁慶、お前は生きていてもらわなくちゃね。新しい生け贄を探すために。いいだろう? だってわたしは、お前のお父様だからね。その権利はあるでしょう?」


 テレビの電源を落とすように、すべての機能が事切れるのをはっきりと感じた。


 つづく


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